こんにちは、CSSファクトリーです。

今回は、日本のキャンピングカー市場において圧倒的なシェアを誇り、日常の買い物や通勤といった普段使いから、休日の長距離クルマ旅までシームレスに活躍する「バンコンバージョン(バンコン)」の空間設計について考察します。少しマクロな視点と、極めて物理的・数学的な視点を行き来しながら、バンコンの居住空間について深く掘り下げてみたいと思います。

キャンピングカーを選ぶ際、多くの方は華やかな内装デザインや、充実した装備品に目を奪われがちです。「ふかふかのシート」「使い勝手の良さそうなキッチン」「大型の冷蔵庫や大画面テレビ」。確かにそれらは快適なクルマ旅を約束する重要な要素であり、キャンピングカーならではの夢を実現する部分です。しかし、キャンピングカービルダーが新しいレイアウトを検討し図面を引く際、あるいは私たちCSSファクトリーが車両のカスタマイズや電装システムのアップデートを設計する際に、最初に向き合うのは極めて現実的な「物理的な寸法」です。

今回は、代表的なベース車両のカタログスペックである荷室幅・荷室長・荷室高から、荷室寸法で描いた「四角形の箱」の面積や体積を比較したものから、バンコンにおける空間の制約と、それを活かしたレイアウトの肝について考察していきます。

■ カタログスペックから描き出す「荷室寸法」

バンコンのベース車両として代表的な存在である、トヨタ・ハイエース(標準ボディ、標準ボディ・ハイルーフ、ワイドボディ・スーパーロング)、トヨタ・タウンエース、そして軽箱バンのダイハツ・ハイゼットとスズキ・エブリィ。これらの車両のカタログに記載されている「荷室寸法」を、単純な直方体(四角形の箱)として頭の中で可視化してみてください。バンコンの居住部で使用できるのは、この直方体から、ホイールハウスやボディ上面の絞りなどが引かれた空間です。これが、バンコンのベース車両が持つ「空間の絶対的なポテンシャル」であり、ビルダーに与えられたキャンバスのすべてなのです。

キャンピングカーはよく「動く家」「走る部屋」と称されます。それならば、そのキャンバスの広さを家屋や建築物の基準である「床面積」に置き換えて考えてみましょう。日本人にとって最も空間の広さを直感的に把握しやすい単位、それが「畳(帖)」です。今回は、一般的な住宅で基準とされることの多い「江戸間(1畳=約88cm×176cm、約1.548平方メートル)」を用いて換算してみます。

まずはバンコンの王様であり、キャンピングカー専用車かと思えるほど絶大な支持を集める「トヨタ・ハイエース ワイドボディ・スーパーロング」。巨大で威圧感すらあるボディを持つこの車両ですが、カタログ値の荷室長は3540mm、荷室幅は1730mmです。これを掛け合わせると約6.12平方メートル。江戸間に換算すると、およそ「四畳(約3.95畳)」になります。

次に、取り回しの良さと入手のしやすさから近年人気が上昇しているコンパクトバンコンのベース「トヨタ・タウンエース」。こちらのカタログ記載値は荷室長2045mm、荷室幅1495mmです。床面積を計算すると約3.05平方メートル。およそ「二畳(約1.97畳)」となります。

そして、日本独自の軽自動車規格で製造される軽箱バンの「ダイハツ・ハイゼットカーゴ」や「スズキ・エブリィ」(この2車種の荷室寸法はほぼ同じです)。エブリィのカタログ記載値は荷室長1955mm、荷室幅は1385mm。掛け合わせると約2.71平方メートルとなり、江戸間換算では「二畳に満たない(約1.75畳)」に過ぎない空間であることがわかります。標準ボディのハイエースであっても、およそ「三畳(約2.94畳)」という計算になります。

■ 「四畳」と「二畳未満」の空間に家を建てるという難題

見た目の印象から、「ハイエースのスーパーロングはあんなに巨大なのに、たった四畳しかないの?」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。国内最大級の大きさを誇るバンコンベース車両であっても、建築の視点では「四畳程度の極小の個室」に過ぎないのです。軽箱バンに至っては「二畳未満」、つまり建築で言えば少し広めのウォークインクローゼットや、洗面脱衣所、あるいは通路程度の面積しかありません。

一般の住宅において、四畳という空間は「小さな子供部屋」や「書斎」として単一の目的で使われると思います。しかし、キャンピングカーはこの極小空間の中に「快適に眠るためのベッド」「食事や団らんをするためのダイネット」「調理や洗い物をするキッチン」「荷物を収める収納家具」、ハイエース・スーパーロングではこれらに加えてマルチルームまで備えている場合があります。さらに、快適なキャンピングカーライフを楽しむために、巨大なサブバッテリーやインバーターなどの電装インフラ設備や家庭用エアコンを搭載することも増えてきました。限られた空間に、これらのすべてを詰め込み、適切に機能させることがキャンピングカーに求められているのです。

しかも、ここで描いた「四角形」は、あくまでカタログ上の最大寸法で作られた理論上の箱です。実際のクルマの荷室は、決して真四角ではありません。床面には後輪が収まる「タイヤハウス」が大きく出っ張っています。壁面や天井は、空気抵抗の低減やボディ強度確保などの理由から、上に向かって内側に「絞り込まれて(傾斜して)」います。さらに、真夏や真冬の過酷な外気温から居住空間を守るために、ボディ外板の室内側に断熱材を貼り、その上から木材などの化粧パネルを装着しています。この断熱・内装架装のプロセスだけで、カタログ寸法から縦・横・高さがそれぞれ数センチ程度削り取られていくのです。

つまり、実際のキャンピングカーの有効な居住空間は、私たちがカタログの寸法から思い描く四角形よりもさらに一回りも二回りも小さく、複雑でいびつな形状をしているのです。

■ 極小空間を「快適な居住空間」へと昇華させるレイアウトの真髄

「最大でも四畳、小さければ二畳未満。しかも真四角ではない」

この絶望的とも言える限られた物理的空間を、いかにして「人が快適に過ごせる空間」として効率よく活用するのか。これこそが、バンコンにおける居住部レイアウトの「最大の肝」であり、各キャンピングカービルダーが数十年にわたって知恵を絞り、しのぎを削ってきた技術と情熱の結晶です。そのレイアウトの工夫の根幹にあるのは、「空間の多重利用」「三次元(立体)的な配置」、そして「ミリ単位の空間パズル」です。

【1. 空間の多重利用(トランスフォーム)】

二畳や四畳の空間に、常設のベッドと常設のダイニングテーブルを両方広げたまま並べることは物理的に不可能です。例えば、大人一人が快適に寝るためのシングルベッドのサイズは2000mm×1000mm程度であり、これだけで軽箱バンでは床面積のほとんどを占有してしまいます。そこで生み出されたのが、走行中は前向き乗車できるシートが、停車時には後ろ向きになってダイネットを形成し、就寝時には完全にフラットなベッドへと展開する「マルチアクションシート」などの可変機構です。「昼間の空間」と「夜の空間」をタイムシェアリング(時間の経過とともに用途を切り替える)することで、限られた床面積を最大限に活用しているのです。

【2. ベッドの向きを決める「荷室幅」の制約】

レイアウトの要となる就寝スペースですが、これは荷室幅という寸法に支配されます。ハイエースのワイドボディは荷室幅が1730mmですが、内装施工後に使用可能な実効寸法は1650mm程度です。小柄な方なら横向きに就寝することも可能ですが、8ナンバーのキャンピングカー要件では、就寝スペースは長さ 180cm 以上、幅 50cm 以上と定められています。よって、ハイエースのワイドボディでも、純正の窓を外して出窓やエクステンションボックスに交換するなどで物理的な寸法を確保しない限り、横向きの就寝スペースで8ナンバー要件を満たすことはできないのです。しかし、このような改造を行って、横向きの就寝スペースを確保することができれば、居住部レイアウトの自由度は飛躍的に高まります。

その一方で、標準ボディのハイエースやタウンエース、軽箱バンでは寸法の制約から横向き就寝スペースの設置は不可能です。必然的に、就寝スペースは縦向きに配置することになります。縦向きになると、1.8m以上の長さが就寝スペースに必要なため、常設のベッドとダイネットやキッチンを両立させることが極めて難しくなります。ハイエースの標準ボディとワイドボディの「幅の差185mm」が、キャンピングカー居住部のレイアウト自由度に大きく影響することがお判りいただけたでしょうか。

【3. 三次元(立体)的な配置と視覚的工夫】

床面積が限られているのであれば、高さを活かすしかありません。ハイエースの標準ハイルーフやスーパーロングでは、1.6mの天井高を活かして、頭上に「オーバーヘッドコンソール(吊り戸棚)」を設置することも可能です。足元や天井付近といった就寝時・着座時には使わないデッドスペースを収納として活用することで、居住空間に荷物が溢れることを防ぐことができます。

また、荷室を侵食するホイールハウスを家具の土台として組み込み、その上にキャビネットやシンクを配置したり、空間を広く見せるために「視覚的な工夫」をしたりすることも重要です。例えば、ホイールハウス上に設置した家具の高さを窓の下端ラインで揃えることで「視線の抜け」を作り、実際の面積以上の開放感を演出することにより、限られた空間の中で心理的な広さ感を演出することができます。

■ 快適性を支える「キャンパー設備」の配置戦略

そして、私たちCSSファクトリーの専門領域である「キャンパー設備」もまた、この限られた空間との熾烈な陣取り合戦を繰り広げています。

現代のキャンピングカーにおいて、サブバッテリーシステム、大出力のインバーター、走行充電器、そしてFFヒーターなどのインフラ設備は不可欠です。しかし、これらは「物理的に大きな体積を持つ設備」です。これらのインフラ設備を、いかに「人間のための居住空間を犠牲にすることなく、デッドスペースに収めるか」が、車両の完成度を大きく左右します。将来のメンテナンス作業性や熱の影響を考慮して対策した上で、家具やベッド下などの見えない場所に、設備を設置したり配線を引き回したりしていく作業は、キャンピングカーのプロフェッショナルの腕の見せ所です。

近年普及が進んでいるリチウムイオンバッテリーは、従来の鉛バッテリーに比べてエネルギー密度が圧倒的に高く、「省スペース化と軽量化」に大きく貢献しています。限られた「四角形の箱」の容積を、インフラ設備ではなく人間のための居住空間としてより広く活用できるようになったことは、キャンピングカーの歴史において革命的な進化と言えます。そして、近い将来BEVやPHEVのキャンピングカーベース車が登場すると、サブバッテリーや空調の課題が一気に解決します。RVパークなどで、エンジンを始動することなく走行用の大容量バッテリーを活用して、車両に標準のエアコンや電源を使用した快適なキャンピングカーライフを楽しめる未来はすぐそこです。

ところで、重量物であるバッテリーや水タンクの配置は、前回のコラムで触れた「車両の動的特性(重心やロール、ピッチング)」にも影響します。重量物は極力低い位置に設置することに加えて、左右と前後は極力中心に寄せることにより、車両の動的特性を改善することができます。キャンピングカーの空間設計は、静的な居住性と動的な走行安定性、どちらも考慮した最良の妥協点を見出して成立させることが必要です。

■ 結び:制約が生み出す機能美

カタログスペックが示す無機質な「四角形」。そして、その面積が示す「四畳」や「二畳未満」という厳しい現実。

だからこそ、キャンピングカーのレイアウトにはビルダーの思想が色濃く反映され、優れたレイアウトがもたらす美しい空間が私たちの心を惹きつけてやまないのだと思います。日本の茶室や宇宙船のコクピット、あるいは船舶のキャビンにも通じる、「極小空間にすべての機能がミリ単位で凝縮された機能美」がそこには存在します。

キャンパー居住部のリフォームを検討されているキャンピングカーオーナーの方、これからキャンピングカーの購入を検討されている方は、ぜひ「このクルマは何畳の部屋なのか?」という物理的な空間をイメージする視点を持ってください。ハイエース・ワイドスーパーロングの「四畳」なら、パートナーと二人で長期の旅に出てもストレスの少ない「ゆとりの空間」を構築できます。一方で、軽箱バンの「二畳未満」という空間は、物理的には狭いですが、一人旅や秘密基地としての利用であれば、手が届く範囲にすべてがある「究極のパーソナル空間」になり得ます。

自分たちの旅のスタイルには、どれだけの広さのキャンバス(四角形)が必要なのか。そして、そのキャンバスの上に、ビルダーはどのようなレイアウトを描いているのか。ベース車両の空間を正しく理解することにより、ご自身がキャンピングカーライフを楽しむ上で最適な車種は何かが見えてくるのだと思います。

私たちCSSファクトリーは、その限られた空間をより快適に、より安全にアップデートするための技術と情熱を持っています。電源容量の不足によるストレスの解消、居住空間を邪魔しない最新の電装系の再構築など、空間と設備の最適化にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

皆様のキャンピングカーライフが、限られた空間の中で無限の広がりを持つ素晴らしいものとなるよう、CSSファクトリーが全力でサポートさせていただきます。