こんにちは、CSSファクトリーです。
「三菱・アウトランダーPHEV」は、エンジン停止中も車両の走行用バッテリーを用いて、標準装備のエアコンやオーディオを使用できるほか、AC100V・最大1500Wの給電機能により電子レンジやケトルなどの家電を使用できることが特徴です。電動車両ならではの大容量バッテリーが持つポテンシャルを車中泊で最大限に引き出すべく、CSSファクトリーでは、2023年式のアウトランダーPHEV(GN0W)のMグレード(メーカーオプションのヒートポンプ式エアコン付)を題材に、簡易版のひとり用車中泊仕様で実証実験を行なっています。
今回は、キャンピングカーのノウハウを持つ我々の視点から、アウトランダーPHEVを始めとするSUVの簡易的な車中泊における空間作り、ベッド構築のポイント、そしてPHEVならではの「電子制御の特徴」とその対応について解説します。
1. ひとり旅ならではの「片側ベッド+リビング」というレイアウト

上記画像の通り、今回の実験ではあえて荷室全面をフラット化せず、片側をベッド、もう片側をリビングスペースとして残す非対称なレイアウトを採用しています。
アウトランダーPHEVは、リアシートを倒した際の床面積は軽ワンボックスと同等程度のスペースを確保できますが、SUV特有のフロア高とルーフ形状により、どうしても荷室高に制限が出ます。具体的な計測値は、就寝スペースとして使用する荷室の室内高は最大でも850mm程度にとどまります。さらに、倒したリアシートは完全には平らにならず、前方に向かって傾斜がつく構造なので、リアシートを畳んだ際のバックレスト上部辺りの荷室高は750mm程度しかありません。
この高さでは、荷室の床に直接座って何らかの作業をすることは難しく、背筋を伸ばしてくつろぐことも困難で、頭が天井に干渉して圧迫感を感じてしまいます。そこで、座って行う作業や飲食は、リアシートを「通常の座席」として活用するのが最も適切だと考えました。足元に専用のテーブルを配置すれば、ひとり旅であれば不自由なく、書斎のような快適な空間で過ごすことが可能です。
2. 快眠を支える「床の剛性」と「段差解消」
SUVでの車中泊において課題となるのが、シートを倒した際に生まれる段差や隙間、そして就寝スペースの床の剛性の不足です。就寝時に、床が曲がったり沈んだりすると、落ち着いて眠ることができません。「平らで十分な剛性を持つ床と適切なマット」がないと、快適に眠ることができないと考えています。
私たちは、このような経験値を元に、今回の実験ではマットの下にMDFボード(繊維状にほぐした木材と接着剤を混ぜて板状に圧縮成形した木質ボード)を仕込んでいます。

段差と隙間の解消:

この画像は、シートバックを倒した際に生じる厄介な段差と隙間を、MDFボードのブリッジでカバーしている様子です。これにより、体が落ち込む不快感を無くしています。
床面長の確保と剛性アップ:
マットの下にこの9mm厚のMDFボードを使用することで、面材としての剛性を確保し、マット単体で発生する局所的な沈み込みを抑えています。頭部はシートバックから20cmほどオーバーハングしていますが、床面をMDFボードで一体化することで撓みを感じることなく、快適に使用できました。
なお、今回使用したマットの長さは180cmですが、マットの端面からテールゲートまで10cm以上の余裕があります。そのため、180cmくらいまでの身長であれば十分に足を伸ばして就寝することが可能です。また、この構造であれば、後席足元の空間を荷物の収納スペースとして有効に活用できます。厚みのあるクッションマットを敷くだけでなく、その下に「硬くて平らな面」を一枚構築する。このひと手間による効果は大きく、この仕様で何泊もしていますが毎回翌朝まで快適に眠ることができています。
なお、今回使用した車両は三菱アウトランダーPHEVの5人乗り仕様ですが、このクルマはリアシートの座面を外しても、リアのシートバックを完全に水平まで倒すことができません。リアシート部を平らな床面にするためには、シートAssyを取り外した上で床を再構築する必要があり、日常的に使用する車への施工としては現実的ではありません。そこで今回は、リアシート周りには一切手を加えず、MDFボードを使用して既存の段差や隙間を解消し、平らで剛性のある床面を構築する方法を採用しました。必要なときだけ設置できる簡易的な構造とすることで、日常的な使い勝手を犠牲にすることなく、車中泊時には快適な就寝スペースを確保しています。
3. エンジン停止状態で使える電力と、周囲への配慮
PHEVを用いた車中泊の最大のメリットは、エンジンを停止したままエアコンやAC100V電源を使用できることです。真夏の猛暑や真冬の低温環境でも、走行用バッテリーを電源として、車両に標準装着された冷暖房を使用できるのです。
しかし、ここで一つ運用上の重要な注意点があります。エンジン自体は完全に停止していても、エアコン稼働時は「電動コンプレッサー」や「冷却ファン」の作動音が車外に響きます。車内にいると高い遮音性により静かに感じますが、外に漏れている騒音は意外と大きいため、静まり返ったRVパークやキャンプ場、道の駅などでは周囲への配慮が不可欠です。隣の車両やテントとの距離を意図的に取る、夜間は設定温度をマイルドに調整してコンプレッサーの稼働率を下げるなど、環境に合わせてスマートな運用を心がける必要があります。
また、アウトランダーPHEVでは、EVプライオリティモードでも駆動用バッテリー残量が低下するとエンジンが始動する場合があるので、バッテリー残量低下時には注意が必要です。
4. 車中泊時はシステムON維持に伴う「電子制御のお節介」に注意
エアコンやAC電源の使用には、停止時でも車両のシステムを「ON(READY状態)」にしておかなければなりません。しかし、今回使用した2023年モデルのアウトランダーPHEVの場合、システムONのまま駐車・滞在を続ける際に細かな注意と対応が必要です。今回の実験では以下の対応が必要でした。
車両接近通報装置の作動:
PレンジでシステムONにした状態で運転席のシートベルトを着用していない場合、車両接近通報装置が作動して警告音が鳴り続けます。通常の走行では問題になることのない制御ですが、車中泊では「Pレンジに入れたままシステムをONにして、運転席を離れる」状態になり、この警告音が意外と耳障りな問題になります。
今回の実証実験では、運転席のシートベルトをバックルに差し込むことで、車両接近通報装置の作動を回避しました。
(これは今回使用した2023年モデルで確認した方法であり、年式によって制御が異なる可能性があります。また、シートベルトを本来の用途以外で使用することを推奨するものではありません)
このように、PHEVはエンジンを停止したまま長時間車内で電力を使用できる一方、通常の走行を前提として設計された制御が、車中泊という特殊な使い方では思わぬ制約になることがあります。
デイタイムランニングライト(DRL)の点灯:
システムONにすると、DRLは常時点灯したままになります。キャンプ場などで煌々とライトを点け続けるのはマナー違反となるため、必ず手動でヘッドライトスイッチを操作し、ライト類をOFFにしなければなりません。
オートライト機能の強制介入:
ヘッドライトを手動でOFFにして停止していても、夕暮れ時などで周囲が暗くなると、オートライトが反応して自動的にヘッドライトが点灯します。夕暮れ時にヘッドライトが点灯したら、再度ライトスイッチでOFFにしないと、周囲を照らして迷惑行為になってしまう可能性があります。
総括:結論とキャンピングカー業界の未来展望
アウトランダーPHEV(GN0W)は「大容量の電源が標準装備されている」電動車です。キャンピングカーとして成立させるには厳しい室内空間しかありませんが、ひとり旅の車中泊仕様としては実用に耐える空間が成立します。室内の低さをカバーする「片側リビングレイアウト」、快眠を生み出す「MDFボードを活用した高剛性ベッド」、そして最新車両ならではの「電子制御への対策」などの工夫で、SUVでも快適に眠れる車中泊仕様として活用可能です。
CSSファクトリーでは、このアウトランダーPHEVを活用して、キャンピングカーの電動化について検証を続けていきます。
東京キャンピングカーショーなどの展示会に足を運ぶと、業界のトレンドが確実に変化していることを感じます。現在、キャンピングカー業界でも注目されているのは、BEVの「Kia・PV5」をベースにしたキャンピングカーです。大容量バッテリーを最初から積んでいるBEVやPHEVを活用したスマートな車中泊スタイルが、これから確実に選択肢のひとつとして増えていくでしょう。
そして、この電動化の波は、新たなキャンピングカー製作の可能性も示唆しています。例えば、現在市販されている車両では、PHEV仕様の「アルファード」をベースとしたラグジュアリーな車中泊仕様車の製作は、非常に面白そうです。
ハイエースの標準ボディをベースにしたバンコンを製作する場合、大容量のリチウムイオン・サブバッテリーシステムを走行充電システムとともに構築し、家庭用エアコンやFFヒーターなどを架装すると、それだけで費用が250万円程度に達することも珍しくありません。
しかし、アルファードPHEVであれば、巨大な駆動用バッテリーとエアコンシステムが最初から完成された形で車両に組み込まれています。高額な電装系や空調設備の追加架装が必要ないことから、ベース車の車両本体価格が約765万円(Zグレード、2026年9月現在)と高額でも、総製作費用で見れば、フル装備のハイエースベースのバンコンとあまり変わらない可能性があります。アルファードをベースに、圧倒的に乗り心地が良く静粛性に優れたラグジュアリーな車中泊仕様車が製作されると、新たな選択肢となり得るのではないでしょうか。
PHEVやBEVには、大容量バッテリー、電動空調、AC100V電源が最初から備わっています。これまでキャンピングカーに「後から追加していた機能」の多くが、車両に標準装備されている時代が近づいている、ともいえるかもしれません。
その結果、キャンピングカーの価値は「どれだけ多くの装備を積んでいるか」から「オーナーの旅や暮らしに合わせてどう使うのか」へと変化していくでしょう。CSSファクトリーは、こうした変化を実際の車両で検証しながら、PHEV・BEV時代の新しい「車中泊」と「キャンピングカー」の可能性を探っていきます。