こんにちは、CSSファクトリーです。

今回は、キャブコン(キャブコンバージョンキャンピングカー)のベース車両として国内市場で高いシェアを誇る、トヨタ・カムロードのベースとなるトヨタ・ダイナの系譜を紐解いていきます。

日本の物流を支える小型トラックであるダイナは、堅牢なラダーフレーム構造と耐久性に優れたエンジンやトランスミッションによって獲得したユーザーからの信頼を高める形で進化してきました。「物流を支える」トラックとしての基本性能は、家具や家電、FRP製のシェルなど、重量物を常に積載した状態で走行するキャブコンにおいても重要な性能です。約70年にわたる歴史を振り返ると、トラックとしてのシャシーの強化、エンジンの環境対応と高出力化、足回りの進化、安全装備の拡充が、キャンピングカーのベース車としても安全性や快適性の向上に貢献してきたことがわかります。

本コラムでは、その源流から現行の8代目、視点を先に見据えた電動化への技術的変遷を世代ごとに解説します。

*コラム執筆にあたり「トヨタ自動車75年史車両系統図」を参照しました。

第1章:ルートトラックから「ダイナ」への進化(初代 1956年〜1963年)

ダイナの歴史は、1956年(昭和31年)に誕生した「トヨペット・ルートトラック(RK52型)」から始まります。当時の日本は高度経済成長期へと差し掛かる時期であり、小回りが利き、かつ多くの荷物を積める小型トラックの要求が高まっていました。

ルートトラックは、1.5Lの「R型」ガソリンエンジンを搭載し、エンジンの上に運転席を配置する「セミキャブオーバー型」を採用したことが特徴でした。ボンネット型が主流だった当時ですが、このレイアウトにより荷台長を拡大することに成功しています。 その後、1959年(昭和34年)のマイナーチェンジに伴い、社内公募によって「ダイナミック(力強い、動的)」に由来する「ダイナ」という車名が与えられました。初代のモデルライフ後半には、より積載効率を高めたスタイルへと移行しています。

第2章:高速化時代への対応と2トントラックの確立(2代目 K170系:1963年〜1969年)

1963年にフルモデルチェンジを果たした2代目は、道路網の整備とモータリゼーションの進展に伴う「輸送の高速化」に対応すべく開発されました。外観では丸型4灯式ヘッドランプを採用し、キャビンの居住性も改善されています。

技術的なトピックとしては、フレームの強化とサスペンションの改良が挙げられます。高速走行時の安定性を高めるため、リーフスプリングのバネレートなどが見直され、最大積載時にも姿勢変化を抑える工夫が施されました。この時代から「2トントラック=ダイナ」という市場の認識が定着し始めます。また、汎用性の高いラダーフレーム構造は、特種用途自動車(特装車)のベースとして多様な架装を受け入れる土台となっていきました。

エンジンは当初は1.9Lの「3R型」のみでしたが、1964年3月には2.3Lの「J型」ディーゼルエンジンが追加されています。ディーゼル車の追加は、いすゞ・エルフ(ディーゼル)に奪われた販売首位の座を1964年9月に奪還する決め手になりました。

第3章:高速道路網の発達と「B型」エンジンの採用(3代目 U10系:1969年〜1977年)

1969年2月に登場した3代目は、現在まで続くダイナの型式「U系」を初めて名乗ったモデルです。高速道路網の発達に備え、ブレーキ性能の強化や大型ミラーの採用など、安全対策の向上が図られました。機構的にはホイールベースを15mm延長しています。ダイハツ工業との1967年の業務提携を受けて「ダイハツ・デルタ」と一部の部品が共通化されたのもこの世代です。

エンジンのトピックは、新型ディーゼルエンジンの搭載です。従来の2.2L(65馬力)に代わり、ダイハツ工業と共同開発された2.5L(70馬力)の「B型」が新たに採用されました。B型エンジンは、船舶や鉄道などでディーゼルエンジンの技術に長けていたダイハツの経験が活かされており、耐久性と低速からの力強さを特徴とし、その後長年に渡りダイナの心臓部として進化の系譜を歩み始めます。 また、荷台形式には低床標準や高床三方開き(積載量2t)、ダンプなどに加え、1969年6月には3t積みモデルが追加されるなど、多様化する輸送ニーズに応え、1977年までトヨタ小型トラックの中核を担いました。

第4章:ダイハツとの協業深化と「ジャストロー」の登場(4代目 U20〜40系:1977年〜1984年)

1977年8月に登場した4代目は、トヨタの小型トラック戦略における転換点となりました。先代では「ダイハツ・デルタ」とは一部部品の共通化のみでしたが、このフルモデルチェンジを機に共同開発となり、同時に「日野・レンジャー2」を加えて、トヨタ・ダイハツ・日野の3社で販売される兄弟車になりました。

ボディースタイルは、従来のセミキャブオーバー型からフルキャブオーバー型へと変更され、ボクシーなキャビンを採用して居住空間、特に足元空間に余裕ができました。このフルキャブオーバー化により、標準ボディ車の全長4690mmは変わらずホイールベースが2815mmから2490mmへと325mm短縮され、最小回転半径は5.7mから5.2mとなり、取り回しが改善されています。さらに、サービス性を高める「チルトキャブ」の採用拡大や、2.5t/3t車への「排気ブレーキ」新設など、安全性とメンテナンス性も改善されました。

そして、4代目では日本のトラック市場における革新となる「ジャストロー」が導入されました。 前輪に通常のタイヤ、後輪に小径のダブルタイヤ(もしくは小径扁平タイヤ)を装着することで、ホイールハウスの張り出しの無いフラットで低い荷台を実現しています。フラットで低い荷台は、キャンピングカー架装においても全高を抑えつつ室内高を確保できることから、低重心化による走行安定性の向上が期待できます。 1980年9月にはキャビン幅を300mm広げた「ワイドキャブロングボデー車(荷台長4310mm)」が追加されるとともに、B型エンジンは排気量を3.2Lに拡大した「2B型」、そして3.4Lの「3B型」へと進化し、動力性能の向上が図られました。

第5章:直噴ディーゼルへの進化・ATの初設定と4WDの拡充(5代目 U60〜90系:1984年〜1995年)

1984年に登場した5代目は、約11年間にわたり製造されたロングセラーモデルです。この時代に、レジャーブームと相まって、ダイナをベースにした本格的なキャブコンバージョンのキャンピングカーが市場に登場し始めます。

技術的な特徴は、B型エンジンの「直噴ディーゼル化」です。3.0Lの「11B型」、3.4Lの「13B型」、そして3.7Lの「14B型」と、用途に応じた多様な直噴ディーゼルがラインナップされました。直噴化により燃費の改善と始動性の向上、そして出力の向上が図られました。キャンピングカーにおいても、直噴B型シリーズの採用が動力性能の改善に繋がっています。

ハイエーストラックなどとコンポーネントを共有する1トン〜1.5トン積クラスにおいては、1985年の改良時から、クラウンを始めとする乗用車やハイエースなどに搭載されていた2.4L自然吸気の「2L型」ディーゼルエンジンが採用されました。静粛性が高く扱いやすいL型エンジンの導入によって快適性が向上し、のちのカムロードへと繋がる1トン積クラスの系譜となっていきます。

また、トランスミッションには1984年の5代目発売時から「2ウェイオーバードライブ付4速オートマチックトランスミッション(AT)」が設定されました。この時代から、イージードライブ化が進められ、配送ドライバーやキャンピングカーオーナーがその恩恵に預かりました。

フロントサスペンションには、1トン〜1.5トン積クラスに「ダブルウィッシュボーン式独立懸架」が採用され、優れた操縦安定性と乗り心地を獲得。さらに積雪地帯や悪路での需要に応えるため、パートタイム4WDモデルが本格的にラインナップされたのもこの世代であり、「雪道でも安心して走れるキャブコン」のベースとなっていきます。

第6章:「カムロード」の誕生(6代目 U100/200系:1995年〜1999年)

1995年に登場した6代目は、空力特性を改善したキャビンデザインを採用しました。サスペンションはさらに進化し、フロントへのダブルウィッシュボーン式独立懸架搭載車が拡大しています。

エンジンは、B型シリーズの進化系であり排気量を4.1Lまで拡大した「15B型」シリーズ(15B-F、ターボ仕様の15B-FT、15B-FTEなど)が搭載されました。この15B型エンジンの技術的トピックは、ギア駆動のOHVでありながら、1気筒あたり4つのバルブを持つメカニズムを採用した点です。 通常、4バルブ化したヘッドではSOHCやDOHCが採用されますが、トヨタはB型エンジンの特徴であるタフなギア駆動のOHVを維持したまま、プッシュロッドを介して4つのバルブを駆動させる設計とし、優れた吸排気効率と動力性能を実現しました。

キャンピングカー業界にとっての大きな転機となったのが、1997年(平成9年)に誕生したキャンピングカー専用ベースシャシー「Camroad(カムロード)」です。日本RV協会(JRVA)やキャンピングカービルダーからの要望に、トヨタが応えるかたちで開発されたカムロードは、ダイナをベースに、乗り心地とロール剛性を両立した専用チューニングのサスペンションや、キャンピングカー架装に配慮した電装系などを採用した専用シャシーとしてビルダー各社に供給されました。その後、日本のキャブコン市場において事実上の標準シャシーとして広く採用され、現在に至るまで高いシェアを維持しています。

さらに、この6代目の時代には特殊なモデルが存在しました。1996年に登場した「スーパーダイナ(BU297型)」です。 これは、陸上自衛隊の高機動車(民生用はメガクルーザー)のシャシーを流用・短縮し、ダイナのキャブを架装した特装車でした。四輪独立懸架のダブルウィッシュボーンサスペンションや、ハブリダクション機構付きのフルタイム4WDシステムに加え、高機動車由来の「4輪操舵(4WS)」も搭載されていました。ハブリダクションによる高い地上高と、後輪が前輪と逆位相に切れる四輪操舵によって小回りが利くことにより、高い悪路走破性と機動性を備えていました。 この車両は、主に株式会社モリタによって専用の架装が行われ、消防用の「救助工作車IV型」として販売されました。しかし、ベースが特殊かつ高額であったため、全国の消防本部でも東京や大阪など数都市に計8台ほど導入されたのみの希少な車両となっています。これをベースにキャンピングカーを製作したら、と妄想を掻き立てる特殊な車両がこの世代のダイナに設定されていたのです。

自動車雑誌「CURIOUS Vol.8」の表紙を飾ったスーパーダイナ(BU297型)

第7章:日野との共同開発とワイドトレッドシャシーの導入(7代目 U300〜500系:1999年〜2011年)

1999年発売の7代目からは、日野自動車との共同開発となりました。2トン積以上の車種は製造も日野自動車で行われるようになり、バッジ違いの双子車が日野・デュトロとして販売されています。

エンジンは、日野製の4.0L直列4気筒コモンレール式直噴ターボディーゼル「N04C型」シリーズへと移行しました。超高圧で燃料を微細化して噴射するコモンレールシステムとDPR(排出ガス浄化装置)の組み合わせにより、PMやNOxを低減。日本の新短期・新長期排出ガス規制をクリアしています。また、2003年には国内小型トラックとしては初となるハイブリッドモデルが5速AMT(Automated Manual Transmission)との組み合わせで追加されています。

カムロードを含む1トン積クラスのディーゼルエンジンにおいては、発売当初は5代目から続くL型ディーゼルの系譜である3.0L 自然吸気の「5L型」が搭載されていました。その後、2007年8月のマイナーチェンジにおいて、コモンレール式を採用した「1KD-FTV型(3.0L 直噴ディーゼルターボ)」に換装され、カムロードも同エンジンへと切り替わりました。この変更により、大幅に動力性能が向上すると共に環境性能が改善しています。

また、この世代では「ガソリンエンジンの再評価」もトピックです。2000年代初頭のディーゼル排ガス規制の強化を受け、ダイナには新世代のガソリンエンジンである2.0Lの「1TR-FE」や、2.7Lの「2TR-FE」が搭載されました。ディーゼルエンジンの規制対応が厳しい時代において、これらのガソリンエンジンは新たな選択肢となりました。

この世代のカムロードでは「リア・ワイドトレッド専用シャシー(シングルタイヤ仕様)」の設定という、重要な技術的変更がありました。 背が高く横風の影響を受けやすいキャブコンにおいて、安定性を高めるにはトレッド(左右のタイヤの間隔)の拡大が有効です。7代目ダイナをベースとしたカムロードに設定された「リア・ワイドトレッドシャシー」は、標準仕様に対してリアのトレッドが約250mm拡大されており、キャンパー架装時の走行安定性が改善されています。

第8章:安全装備の標準化、ダブルタイヤ化とエンジン不正問題(8代目 U600/800系:2011年〜現在)

2011年に登場し、マイナーチェンジを重ねながら現行モデルとして販売されているのが現行型の8代目です(2026年7月現在)。この世代の技術的トピックは、「先進安全装備の標準化」と「足回り・トランスミッションの改良」です。

カムロードにも、足回りに大きなアップデートが行われました。キャンパー架装部の大型化・重装備化が進む中、長年の課題であった「リアタイヤのバーストリスク」への対応として、海外向けダイナのリアアクスルを流用した「前後同径ダブルタイヤのリア・ワイドトレッドシャシー」が2019年夏に設定されました。これにより、リアの許容荷重が向上すると共に、走行安定性も改善されています。 さらに2021年の大幅改良では、安全装備(TSSなど)の標準化とともにベース車輌の整理が行われ、カムロードのディーゼル車は全車「リアワイドトレッドの大径ダブルタイヤ仕様」に統合されました(ガソリン車はリア小径ダブルタイヤ・標準トレッド)。カムロードは全車がダブルタイヤ化されたことで、安全マージンが高められました。

トランスミッションは、5代目から採用された4速ATが電子制御式6速ATに進化しました。2018年5月の一部改良では、ディーゼルハイブリッド ワイドキャブ車のトランスミッションが5速AMTから6速AMTへと変更され、多段化が進められ、燃費性能が機種により7~9%改善されました。6速に多段化されたATの採用により、カムロードベースのキャブコンも発進時の力強さと高速巡航時の静粛性が両立されています。

エンジンは先代から熟成を重ねた「N04C型」を継続搭載していましたが、2022年に開発元である日野自動車において、排出ガスおよび燃費性能試験のデータ不正が発覚しました。この問題により、「N04C型」エンジンの一部で国土交通省から型式指定が取り消され、ダイナおよびカムロードを含む搭載車両の出荷が停止される事態となりました。 現在の状況としては、日野自動車における体制の見直しと、国土交通省の監督下での再試験を経て、基準に適合することが確認されたモデルから出荷が再開されています。

カムロードを含む1t積クラスのディーゼルエンジンは、7代目後半から継続搭載されていた「1KD-FTV型」が、2021年の改良時に2.8L直列4気筒直噴ディーゼルターボ「1GD-FTV型」へと換装され、動力性能の向上と環境性能の改善が図られました。
さらに2026年1月の一部改良では、1t積シリーズのディーゼルエンジンに3.0L直列4気筒直噴ターボ「3GD-FTV型」が新たに採用されました。これは、強化される環境規制に対応したもので、最大トルクと出力は2.8Lの1GDと同じですが、トルク特性と環境性能が改善されています。

第9章:ダイナの電動化と今後の展望

次世代のダイナ(およびカムロード)においても、将来のハイエースと同様にHVやPHEV、BEVの導入が想定されます。すでに日野自動車からは、主に宅配事業用として超低床・前輪駆動の小型BEVトラック「デュトロ Z EV」が発売されており、都市部の配送に活用されています。

近い将来、これがキャンピングカーに応用されると、大きな変化が起こりそうです。大容量の走行用バッテリーから直接AC100V電力をキャンパー架装部に供給できるようになれば、大容量のサブバッテリーシステムを搭載しなくても空調や家電を使用できる可能性があります。PHEVやBEVであれば、エンジンを始動することなくRVパークやキャンプ場で車両に標準のエアコンを稼働させることで快適に過ごせるかもしれません。私たちは、トラックとしての積載能力と、PHEV・BEVの蓄電池としての能力が融合することで、キャブコンの設計思想が変わる可能性が高いと予想しています。

おわりに:CSSファクトリーの取り組み

初代ルートトラックから現行の8代目に至るまで、ダイナは「安全に、確実に荷物を運ぶ」という目的のもと、シャシーの強靭化、ダイハツ工業と共同開発されたB型エンジンなどの名機たちの熟成、AT・AMTの多段化、そして安全技術の高度化を続けてきました。その遺伝子はキャンピングカー専用シャシー「カムロード」へと受け継がれ、日本のキャブコン文化の土台を支えています。

CSSファクトリーの母体であるボディショップハタケヤマでは、数多くの「はたらくダイナ」のメンテナンスを手掛けてきました。FRPのキャンパー架装部を含むキャブコンのメンテナンスや鈑金塗装にも長年の実績があります。業務用トラックへの対応で培った整備ノウハウや、キャンピングカー特有の架装や設備への対応など、経験に基づく確かな技術力で、オーナーのみなさまの「安心・安全なキャンピングカーライフ」をサポートしてまいります。