こんにちは、CSSファクトリーです。

今回は、バンコンバージョンキャンピングカー(バンコン)において国内キャンピングカー市場で圧倒的に高いシェアを持つ、トヨタ・ハイエースの系譜を技術的な視点から紐解いていきます。

ハイエースは、日本の物流や生活インフラを支える商用車として普及していると同時に、レジャーに使用する個人オーナーやキャンピングカービルダーからもベース車両として支持されています。約60年にわたる技術的な変遷を振り返ると、ボディ構造の強化、エンジンの熟成、トランスミッションの多段化、そして安全装備の拡充などが、キャンピングカーにおける耐久性や快適性、架装の自由度へ直結していることがわかります。本コラムでは、初代から現行の200系、そして次世代の電動化を見据えた技術的変遷を世代ごとに解説します。

第1章:多目的キャブオーバーの誕生(初代 H10系:1967年〜1977年)

ハイエースは、日本のモータリゼーションが本格化した1967年(昭和42年)10月に登場しました。当時普及していた小型トラック「トヨエース」に対し、より小型で扱いやすく、乗用車ベースのバンよりも積載性に優れた車両という市場の要求に応える形で開発されています。

特徴は、エンジンの上に運転席を配置する「キャブオーバーレイアウト」と「フルモノコックボディ」を採用したことです。それにより、限られた全長のなかに十分な容積の荷室空間を確保しました。また、フロントにはダブルウィッシュボーン式の独立懸架サスペンションを採用し、乗用車に近い乗り心地を実現しました。当初より、9人乗りのワゴン仕様や12人乗りと15人乗りロングボディのコミューター、トラックが追加され、計11車種が設定されています。

エンジンは、1.3Lの「P型」が搭載され、ワゴンとコミューターロングには1.5Lの「R型」が搭載されていました。モデルライフ途中には、「R型」が1.6Lへ換装され、積載時の走行性能向上が図られました。また、初代でもモデルライフ途中にAT搭載車が設定され、ドライバーの負担軽減に向けたイージードライブの歩みが始まっています。

第2章:ワゴン仕様の拡充とスーパーロングの登場(2代目 H20~40系:1977年〜1982年)

1977年に登場した2代目では、1970年代後半の週休二日制導入に伴うレジャー需要の増加を背景に、ファミリー層に向けた5ナンバーのワゴン仕様のラインナップが拡大されました。技術的なトピックとしては、乗用車用に開発された「L型」ディーゼルエンジン(2.2L)の搭載が挙げられます。クラウンにも採用されていたこのエンジンは、従来の商用ディーゼル特有の騒音や振動を抑え、ワゴンとしての快適性を高めました。

また、キャンピングカーの架装において重要なポイントとなるのが、この2代目での「スーパーロング」および「ハイルーフ」仕様の設定です。 当時の日本の商用バンは「4ナンバー(小型貨物)枠」に収めるのが一般的でしたが、2代目ハイエースにはボディサイズを「1ナンバー(普通貨物)枠」に拡大した、全長とホイールベースを延長したスーパーロングと、全高を上げたハイルーフが設定されています。

1ナンバーサイズのボディが設定されたことにより架装の自由度が高まり、常設ベッドなどを設定したキャンピングカーも製作され、現在のバンコンの基礎ともいえるレイアウトが確立されていきました。

第3章:乗用ニーズへの対応と駆動系の進化(3代目 H50系:1982年〜1989年)

3代目は、内外装の質感向上に加え、ワゴン仕様のリアサスペンションに従来のリーフスプリング(板バネ)に代わり「リンク式コイルリジッドサスペンション」が採用されました。これにより、商用バン特有の突き上げが軽減され、後席の乗り心地が向上しています。

ガソリンエンジンは、新世代の「Y型」へと刷新されました。軽量・コンパクトかつ低燃費性を重視した設計であり、実用域での扱いやすさが向上しています。トランスミッションにおいても進化が見られ、従来の3速ATから「オーバードライブ(OD)付4速AT」へと多段化が進み、高速巡航時の静粛性向上と燃費低減に大きく貢献しています。

これまで、後二輪駆動のみだった駆動方式ですが、1985年8月のマイナーチェンジでワゴンの一部グレードとバンに4WD仕様が追加されました。これは、ハイラックス系の駆動系を転用した副変速機付きのパートタイム式でした。1987年8月のマイナーチェンジでは、ワゴンのほぼ全グレードに4WDが拡大設定され、雪道や非舗装路での走破性を求めるユーザーのニーズへの対応が進んでいます。

第4章:乗用ワゴンの充実と国内・海外モデルの分岐(4代目 100系:1989年〜2004年)

1989年に登場した4代目(100系)は、RV需要の高まりとともに個人向けの乗用ワゴンとしても販売台数を伸ばしました。3代目から導入されたリンク式コイルリジッドサスペンションも引き続き採用され、ワゴンとしての快適性が維持されています。

ガソリンエンジンは、新開発の直列4気筒「RZ型」(2.0L/2.4L)へと移行しました。RZ型は、実用的なトルク特性を重視したセッティングで、クロスフローのSOHCを採用し、従来のカウンターフローでOHVのY型に比べ出力・トルクともに向上が図られました。なお、RZ型には、1995 年にDOHC4バルブ化された「3RZ-FE」が追加されていますが、ハイエースには搭載されず、ライフサイクルを通してSOHC2バルブのままでした。一方、ディーゼルエンジンは1993年に3.0Lディーゼルターボ「1KZ-TE型」(電子制御式分配型噴射ポンプ・渦流室式)が搭載され、重量のあるキャンパー架装時にも余裕のある走行性能を実現しました。なお、100系のディーゼルはワゴンがこの1KZ-TE型を最終型まで継続する一方、バン・コミューターは平成9年規制への対応にあわせて自然吸気の3.0L「5L型」に換装されています。

採用されたタイヤは、ワゴンとバンで異なるサイズが与えられていました。 乗り心地を重視するワゴンには、乗用車規格の「205/70R15(2WD)」や「215/70R15(4WD)」が採用されました。貨物仕様であるバンには、LT規格の「195R15-6PR/8PR LT」が採用されていました。このバンのタイヤサイズは、現在の200系ハイエースでジャストローを除く全機種で採用されている「195/80R15 107/105L LT」と荷重指数の記載が異なりますが互換性のある同サイズとなっています。

4WDは、当初は3代目から踏襲した副変速機付きのパートタイム式でしたが、1993年8月のマイナーチェンジ時にセンターデフにビスカスカップリング式LSDを組み込んだフルタイム4WDになり、副変速機は廃止されました。操作の煩わしい2WD/4WD切り替え機構やフロントホイールハブのロック/アンロック操作から解放されるとともに、舗装路での高速走行での安定性も高まりました。現行のアルファードのガソリン車などに採用されているカップリング式とは異なり、常時前後輪を駆動するセンターデフ式のフルタイム4WDは、重心が高く積載重量の変化が大きい商用バンには特に有効で、雨天時や強風時の安定性が高まっています。

この4代目の時代に、ハイエースの系譜は国内向けと海外向けで分岐します。 海外市場における前面衝突安全基準の厳格化に対応するため、トヨタはキャブオーバー型の100系と並行して、セミボンネット型の「グランビア」を開発しました。国内ではグランビアやその兄弟車(グランドハイエースなど)が展開され、のちに「アルファード」へと繋がる高級ミニバンの系譜を形成します。 一方、欧州等の海外市場では、このセミボンネット型モデルが「ハイエース」として販売されました。

乗用モデルの役割をアルファード/ヴェルファイアに移行したことで、次世代の国内向けハイエースは商用および架装ベース車としての機能に特化していくことになります。

なお、ハイエースはそのサイズと信頼性の高さから救急車として多く使われていますが、1992年5月にセルシオ用のV8エンジン「1UZ-FE」を低速トルク重視の220馬力に再チューニングして搭載した高規格救急車の「トヨタ・ハイメディック」が設定されました。救急車専用ではありますが「V8エンジンのハイエース」がトヨタの正規車両として存在していたのもこの世代の特徴です。

第5章:日本の道路環境に最適化されたパッケージング(5代目 200系:2004年〜現在)

2004年に誕生し、現在も国内で販売が続くのが「200系」です。 海外市場向けモデルの多くがセミボンネット型の「300系」へと移行する中、国内向けの200系は、前面衝突安全基準に対応するためのクラッシャブルゾーンを設けつつ、従来のキャブオーバー型の1BOXスタイルを維持しました。

200系では、これまでのホイールベース2330mmの標準ボディが廃止され、ホイールベース2570mmのロングボディが事実上の「標準ボディ」になりました。4ナンバー枠の上限ギリギリのサイズ(全長4695mm、全幅1695mm、全高1980mm)で、これは日本の道路環境と積載要件に合わせた独自のパッケージングと言えます。一方、元々4ナンバー枠を全長と全高が超えていたスーパーロングハイルーフは、世界標準とも言える全幅1880mmのワイドボディになり、「スーパーロング・ワイドボディ・ハイルーフ」(全長5380mm、全幅1880mm、全高2285mm)は、キャンピングカーのベース車として広く採用されています。なお、ワイドボディはロングボディにも全高2105mmのミドルルーフと共に採用され、当初は10人乗りの乗用ワゴンのみ、後に1ナンバーのスーパーGL が設定されています。

ガソリンエンジンは、信頼性と耐久性を高めた新開発の「TR型」(2.0Lの1TR-FE/2.7Lの2TR-FE)へと刷新され、DOHC・4バルブの採用に加えて、吸気側のカムにはVVT-i(連続可変バルブタイミング機構)を採用し、低中速域のトルク特性と環境性能を両立させています。2014年12月のマイナーチェンジでは、排気側のカムの位相も連続可変するDual VVT-iが採用されると共に圧縮比も上げられ、燃費性能が改善し出力も向上しています。

ディーゼルエンジンは、当初2.5Lの「2KD-FTV型」が搭載されていましたが、2007年8月の2型へのマイナーチェンジ時に3.0Lの「1KD-FTV型」に換装されました。その後、新開発の2.8L「1GD-FTV型」に換装されて現在に至っています。

2017年には「Toyota Safety Sense」標準装備による衝突被害軽減ブレーキや車両姿勢制御システム(VSC)が搭載されるなど、環境性能と安全性能のアップデートが続けられています。

また、トランスミッションには当初5MTと4速ATが設定されていましたが、ATが電子制御式の6速AT(6 Super ECT)へと多段化されました。2021年8月の一部改良では5MTが廃止され6ATに一本化されています。

第6章:ハイエースの電動化と今後の展望

現在、次期ハイエースがハイブリッド化やPHEV化、BEV化される可能性が議論されています。ハイブリッドや PHEV、BEVの場合、車両本体に搭載された大容量のバッテリーからのAC100V給電機能が搭載される可能性もあります。これが実現すれば、外部電源や高額なサブバッテリーシステムを使用することなくキャンパー設備や家電を使用することが可能となります。また、PHEVやBEVであれば、エンジンを始動することなく車両に搭載されているエアコンを使用することも可能です。大容量のサブバッテリー搭載が不要になる可能性が高いことから、キャンピングカーの設計や運用方法が大きく変化することが予想されます。

おわりに:CSSファクトリーの取り組み

初代から現行の200系に至るまで、ハイエースは空間効率と耐久性、信頼性の高さ、そして、それらを併せ持つことによるリセールバリューの高さを特長として進化してきました。CSSファクトリーの母体であるボディショップハタケヤマでは、長年にわたり「はたらくハイエース」のメンテナンス、鈑金塗装、架装部の修理を手掛けてきました。長年の経験に基づく適切な整備と管理を通じて、キャンピングカーオーナーのみなさまの「安心・安全なキャンピングカーライフ」をサポートしてまいります。