はじめに:なぜ「エブリイ」は軽キャンパーのベース車として定着したのか

こんにちは、CSSファクトリーです。

前回のコラムでは、日本のキャンピングカー市場において独自の進化を遂げている「軽キャンパー」の系譜について焦点を当てました。今回は、軽キャンパーのベース車両として多くのビルダーやユーザーから支持されている「スズキ・エブリイ」の系譜について述べていきます。

排気量660cc、全長3.4m×全幅1.48mという規格の枠内で居住設備を架装し、長距離を走行する軽キャンパーのベース車両には、高い空間効率、架装重量に耐えうるシャシー、そして過酷な使用環境における耐久性と信頼性が求められます。エブリイが多くのビルダーから支持される背景には、1964年に誕生した「スズライトキャリイバン」から続く軽商用バンとしての構造的進化と、軽トラック(キャリイ)と軽バン(エブリイ)におけるシャシー設計の分岐という歴史が存在します。

本稿では、スズライトキャリイバンから現代のDA17系エブリイに至るまでの変遷を、キャンピングカーのベース車両としての適性と整備のプロの視点から解説します。

*この記事は、スズキデジタルライブラリー・キャリイバン/エブリイ、自動車ガイドブック、カタログを参考に執筆しています。

第1章:空間効率の追求〜「スズライトキャリイバン」の誕生(1964年〜1970年代)

日本の高度経済成長期、商店の配送や職人の移動手段として軽トラックが広く普及する中、全天候型の荷室と人員輸送を兼ね備えた軽バンのニーズが高まりました。

初代 スズライトキャリイバン(FBD型・1964年)

1964年、スズキは軽トラックのバリエーションとして、ボンネットを持つセミキャブオーバータイプの後輪駆動レイアウトを採用した「スズライトキャリイバンFBD」を発売しました。

現代の軽キャンパー製作において、家具の配置やベッド展開を左右する要素に「フラットな床」がありますが、初代モデルの時点ですでにホイールハウスの突出を抑えたフラットなフロア設計が採用されていました。四角い空間を有効に使うというバン本来の設計思想は、この時期から確立されていたようです。

2代目 スズライトキャリイバン(L20V・1966年)

わずか2年で2代目となったキャリイバンは、荷室長を45mm、幅を5mm拡大しました。バックドアには上下開き式が採用され、積載性も向上しています。搭載される2サイクルエンジンには、このモデルからオイルをシリンダー壁とクランク大端部に直接供給する「CCIS」が採用され、信頼性と耐久性を高めています。

3代目 キャリイバン(L30V型・1968年)

1968年の3代目「L30V型」からは、ボンネット型から前輪がフロントシート下に配置される「フルキャブオーバー型」に移行しました。これにより、荷室寸法は長さ1,585mm、幅1,060mm、高さ1,025mmとなり、限られた車両寸法から最大限の広さを得ることに成功しています。

4代目 キャリイバン(L40V型・1969年)

1969年7月のキャリイトラックに続き、11月にはキャリイバンも3代目登場からわずか1年少々で4代目にモデルチェンジします。この世代の最大の特徴は、1968年に独立してイタルデザインを設立したばかりのジョルジェット・ジウジアーロによる未来的なデザインでした。前後ウインドウの傾斜角がほぼ同一の意欲的なもので、当時の欧州のモーターショーなどで見られた将来のシティコミューター的なデザインが量産車として具体化されています。

しかしながら、リアウインドウの傾斜はそのまま荷室容積の減少にも繋がっており、実用ユーザーからは荷室容積が犠牲になったことが指摘され、課題となりました。

余談ですが、1998年のダイハツ・ハイゼットバン/アトレーも、ジウジアーロがデザインしました。とてもスタイリッシュな軽ワンボックスバンでしたが、こちらもデザイン優先で荷室容量が犠牲になった部分があり、モデルチェンジ時には荷室容量を優先したデザインに変更されたのが興味深いところです。約30年を経て、歴史が繰り返されたのでしょうか。

また、4代目キャリイバンには、車中泊仕様が設定されていたことも注目すべきことです。前席と後席を仕切るテーブルをベースにハンモック型ベッドが取り付けられるようになっており、2名が就寝できました。窓にはカーテンが装備され、専用リアルームランプも装備されていました。グレード名は「キャンピングカー」ですが、内容的には現代の車中泊仕様と同様で、車両価格はベースモデルより約2万円高い39万5000円でした。

半世紀以上前に、軽バンベースの車中泊仕様がスズキのカタログモデルとして設定されていたのは、とても興味深い事実です。

5代目 キャリイバン(L50V型・1972年)

1972年の5代目(L50V型)では荷室サイドに「スライドドア」が採用されました。狭い駐車スペースでの乗降や荷物の積み下ろしに有利なスライドドアは、70年代以降ワンボックス型商用車の必須装備となりました。

先代のイメージを残しつつ、リアウインドウを垂直近くまで立てたことにより、不評だった荷室容量の少なさも改善されました。

5代目のモデルライフ終盤には、軽自動車規格の変更が行われ、これまでの「全長3,000mm×全幅1,300mm×全高2,000mm、排気量360cc以下」から、「全長3,200mm×全幅1,400mm×全高2,000mm、排気量550cc以下」に拡大しました。

キャリイバンは、ボディの変更無しでバンパーのみわずかに拡大して550ccのLJ50型水冷2サイクル3気筒エンジンに換装した「キャリイ55バン(ST10V型)」に移行しました。

6代目 キャリイバン(ST20V型・1976年)

ST10V型は短命に終わり、1976年11月には、ボディを拡大したST20V型にモデルチェンジされ「キャリイワイドバン」として発売されました。新規格ボディは、軽フルキャブバンで最大の荷室長1,660mm、幅1,250mmを実現すると共に、バックドア開口部とサイドドア開口部もそれぞれ100mm拡大されています。

第2章:多目的用途への対応と「エブリイ」の独立(1980年代)

1976年の規格改定(550cc化、ボディ寸法拡大)を経て、軽バンは商業用途だけでなく、レジャーなどの用途にも使用されるようになり「エブリイ」の誕生と4WDの追加につながっていきます。

7代目 キャリイバン(ST30/40系)

この世代では、多様化するニーズに応えるために、多くの仕様が追加されています。まず、実用ユーザーの荷室拡大のニーズに応えるために、「ハイルーフ仕様」が追加されました。また、1980年に発売されたスバル・サンバー4WDを発端に全メーカーの軽トラックとワンボックスバンに設定された4WDは、キャリイバンにも1981年に設定されました。この4WDは、長年ジムニーを生産してきたスズキらしく、副変速機付きのパートタイム4WDの駆動系に12インチの大径タイヤを採用し、あぜ道や未舗装路、降雪地域での走破性を高めるユーザーのニーズに応えています。

一方、この時代には排出ガス規制への対応も求められるようになりました。長年採用されてきた2サイクルエンジンに加え、新開発の3気筒4サイクルエンジン搭載車が設定され、環境性能と商品性を高めています。また、1982年、乗用志向のグレードに「キャリイバン・エブリイ」のサブネームが設定されます。軽ワンボックスを一般ユーザーが乗用用途やレジャー用途にも活用し始めた市場に対応するため、内装トリムや豪華装備を追加して快適性を高めたモデルでした。

これは、後の軽キャンパー市場につながる重要な変化だったと考えられます。

それまで軽バンは基本的に「荷物を運ぶための商用車」でした。しかし、この頃から「荷物を積むための広い空間」を、レジャーや旅行など人のための空間として利用するという発想が明確になっていきます。その流れを象徴するのが、1982年に登場した「キャリイバン・エブリイ」です。

8代目 キャリイバン(DA71V系)

1985年のフルモデルチェンジでは、バンモデルは「エブリイ」、トラックモデルは「キャリイ」となり車名が完全に分離され、現在の「エブリイ」という車名がここから始まりました。

この世代の特徴は、長年使用されてきた2サイクルエンジンが完全に廃止されたこと、フルモデルチェンジから半年後にはEPIターボ仕様が追加され、高出力化のニーズに応えたことです。また、強まる乗用ニーズに応えるために、上級グレードにはパノラマウインドー付のパノラミックルーフが装着されたり、多彩なシートアレンジが可能なヘッドレスト付きの分割式リアシートが採用されたりと、当時流行していた小型乗用車の豪華なワンボックスワゴンに追従するような進化を遂げていきました。

なお、1990年には、軽自動車規格が改正され、規格の上限が全長3,200mmから3,300mm、排気量が550ccから660ccになりました。エブリイは、新規格に対応するためにビッグマイナーチェンジを行い、前後バンパーの拡大と、660ccエンジンの採用とそれに伴う各部の変更を行い、DA51V型に移行しました。

第3章:DE51V/DF51V型の「リアミッドシップ化」とトラックとの構造的分岐(1991年〜1998年)

1991年に登場した通算9代目となる「DE51V / DF51V型」エブリイは、軽商用車のシャシー構造において重要な転換点となりました。

この世代において、スズキはエブリイ(バン)とキャリイ(トラック)の車体構造を分岐させます。それまで両車は前席下にエンジンを配置するキャブオーバー型のFRレイアウトを共有していましたが、9代目エブリイ(DE51V)はエンジンを後輪車軸の直前に搭載する「リアミッドシップ」に変更されました。

このレイアウトは、長年ホンダ・アクティで採用され、一部では「農道のNSX」などと呼ばれています。両車の大きな違いは、リアサスペンションです。どちらもド・ディオン式のリジットであることは共通ですが、ホンダが一貫して板バネを採用していたのに対して、スズキでは5リンク式を採用していました。

リアミッドシップ化による構造的変化

キャンピングカービルダーやユーザーの視点において、このレイアウト変更はいくつかの利点を生みました。一つは、エンジンが後方に移動したことによる2列目足元空間の拡大です。エンジンとトランスミッションが前席下から無くなったことにより、広々とした空間が生まれました。二つ目は、エンジン音と熱が前席から遠ざかることによる静粛性と快適性の向上です。

一方で、同時期にフルモデルチェンジした軽トラック「キャリイ(DC51T/DD51T型)」は、従来通りの前席下のキャブオーバーエンジンレイアウトを継続しました。軽トラックにおいては、従来の構造を踏襲することにより、業務用の架装のしやすさなどの利便性を継続することが理由だと推測します。この時点で、居住性を重視するバンと、荷役性を重視するトラックで別々のシャシー構造を採用するという設計判断が下されました。

リアミッドシップ構造における架装・整備上の課題

フラットフロアを実現したリアミッドシップレイアウトですが、DE/DF51系の一代限りで採用が終了します。その背景のひとつに、このレイアウトが架装や派生車の開発、整備性という面で、いくつかの制約を抱えていたことが挙げられそうです。

ひとつめは「福祉車両(車いす移動車)」への対応です。車いすが乗車できるスロープ仕様車を製作するには、後部床面を低く下げる必要があります。しかし、後部床下にエンジンが搭載されるリアミッドシップ構造では床下スペースの確保が難しく、スロープ仕様車の製作には大きな制約がありました。

ふたつめは「架装後のメンテナンス性」です。リアミッドシップエンジンのサービスホール(点検口)は後部荷室の床面に位置します。例えばキャンピングカーとして床張り加工や家具の固定を行う場合、メンテナンスリッドの開口部を適切に確保していないと、エンジン整備のたびに架装物を分解・移動させなければならず、メンテナンス性の低下が避けられません。

この点は、現在のキャンピングカー架装においても重要な示唆を与えてくれます。キャンピングカーは「完成時の使い勝手」だけでなく、長期間使用されることを前提に、将来の点検・整備・部品交換まで考慮して架装することが重要なのです。

第4章:衝突安全規格の改定とレイアウトの再構築(1999年〜2005年)

1998年10月、衝突安全性の向上を主眼とした軽自動車の新規格が施行されました。

10代目 エブリイ(DA52V/DA62V型・1999年)

新規格に対応するため、1999年に登場したエブリイは、前輪をフロントシート前方に配置した「セミキャブオーバーレイアウト」を採用し、同時にエンジン位置をリアから再びフロント(シート下)へ戻しました。

これにより、リアの床下空間が空き、福祉車両のスロープ架装が可能となりました。キャンピングカー架装においても、リア床下のスペースは収納庫やFFヒーター、サブバッテリーの設置場所として活用できるという利点があります。

長いホイールベースは直進安定性を向上させ、長距離移動時のメリットとなりました。エンジンは耐久性に優れたアルミ製ブロックの「K6A型」が採用されています。一方で、クラッシャブルゾーン(ボンネット)を設けたことで、限られた全長の中での荷室長確保が技術的な課題となりました。

軽トラックにおけるレイアウト変更の影響

同時期、トラックの「キャリイ」もセミキャブオーバー化(DA52T型等)されましたが、前輪が前方に移動しホイールベースが長くなったことで最小回転半径が大きくなり、またボンネットによって荷台長が短縮されました。実用性が重視されるトラック市場において、この変更はユーザーから改善を求める声が多く寄せられる結果となりました。

第5章:パッケージングの最適化とトラックとのアーキテクチャ分離(2005年〜)

2000年代後半以降、車中泊需要が増加する中で、エブリイはパッケージングの最適化を進めます。

11代目 エブリイ(DA64V型・2005年〜2015年)

2005年登場のDA64V型は、DA52V/DA62V型のレイアウトを踏襲しながら、丸みを帯びたデザインから側面を立てて荷室容積の拡大を狙ったデザインに変更され、衝突安全性を確保しながら荷室容積を拡大しています。

また、「インパネシフト」の採用により前席足元の空間がフラットになり、運転席から助手席への「左右のウォークスルー」が可能となりました。これにより、駐車環境によって運転席側ドアが開けにくい場合でも助手席側からの降車が容易になり、キャンピングカーとしての使い勝手が向上しました。

軽トラックのフルキャブオーバー回帰

一方、セミキャブオーバー化により課題を残したトラックの「キャリイ」は、2013年のモデルチェンジ(DA16T型)において、前輪をシート下に配置する従来の「フルキャブオーバー」へ回帰しました。安全基準を満たしつつ、短いホイールベースによる小回り性能と荷台長を確保するためです。この結果、エブリイ(バン)とキャリイ(トラック)は完全に異なるシャシーアーキテクチャを持つことになりました。

12代目 エブリイ(DA17V型・2015年〜現在)

現行モデルのDA17V型は、2015年の登場以降も法令対応や市場ニーズに合わせた継続的なメカニズムのアップデートが行われています。

登場当初はプラットフォームの刷新による大幅な軽量化が特徴でしたが、近年では各種安全基準や環境規制(法令対応)への適合に伴い、車両重量の増加や車両価格の上昇といった変化も見られます。

直近の改良におけるトピックとしては、トランスミッションが従来の4速ATから新たにCVT(無段変速機)へと換装された点が挙げられます。このCVTはライバルであるダイハツが開発・製造しているものです。エンジン縦置きの商用車用として、電子制御4WDなどを含めて新規開発するには多額の開発費が必要です。そのため、スズキはダイハツからの調達に踏み切ったのではないかと推測します。

この背景には、2000年代初頭から日本自動車工業会(自工会)などを中心に推進されてきた「協調領域の拡大と部品の標準化」という業界全体の潮流があります。日本独自の規格である軽自動車のコスト優位性を維持するため、メーカー各社は「競争領域」と「協調領域」の切り分けを進めてきました。前述のように軽商用車用の縦置きCVTという専用ユニット開発には莫大なコストが必要です。ダイハツが開発・製造するトランスミッションをスズキが採用し、適合チューニングのみを自社で行うという手法は、長年模索されてきた業界の合理化が結実した象徴的な事例と言えます。このCVTの採用により、エブリイは燃費性能や巡航時の静粛性が向上しました。

さらに駆動系の進化として、本格四輪駆動車ジムニーで採用された「ブレーキLSD」の技術を応用した「ぬかるみ脱出アシスト」と呼ばれるトラクションコントロールの採用が挙げられます。これは空転した車輪にブレーキをかけ、接地している車輪の駆動力を確保する電子制御技術です。これにより、機械式LSDを搭載していないFR(後輪駆動)モデルであっても、キャンプ場のぬかるみや雪道などの低μ(ミュー)路において一定の走破性を確保できるようになりました。4WDによる50kgの重量増なしにある程度の走破性を実現可能な制御技術の進化は、2WD仕様を選択したユーザーの安心感を高めています。

第6章:OEM供給の拡大と軽バン市場における車種の集約

エブリイの基本設計とシャシーコンポーネントの汎用性を示す事実として、「OEM(相手先ブランドによる生産)供給」の拡大が挙げられます。

1989年にマツダ向けに「スクラム」としてOEM供給を開始したのが端緒となります。これは、軽商用車の専用開発・生産設備を持たないマツダの製品ラインナップ維持のニーズに対応したものです。

さらに2010年代に入ると、日本の軽商用車市場を取り巻く環境の変化から、以下の動きがありました。

日産自動車: マツダ同様、自社での軽商用車開発リソースを持たず、2003年から軽ワンボックスバンとして三菱ミニキャブのOEM「クリッパー」を販売していました。三菱の軽ワンボックスバンの自社生産終了に伴い、2013年8月にスズキと軽商用車(エブリイ/キャリイ)のOEM供給契約を結び、同年12月より「NV100クリッパー」としてエブリイのOEM調達を開始しました。

三菱自動車: 長年「ミニキャブバン」を自社開発していましたが、環境規制対応などの開発コスト増を背景に2014年にガソリン車の自社製造を終了し、スズキからのOEM調達へ移行しました。

こうした各メーカーの経営判断・リソース選択の結果として、スズキ・エブリイがOEMベース車両として採用されたのでした。

現在、日本のキャブオーバー型軽ワンボックスバン市場ではエブリイ及びそのOEM(スズキ・マツダ・日産・三菱)が広く普及しており、ダイハツ・ハイゼットカーゴ/アトレーと共に事実上の標準(デファクトスタンダード)となっています。なお、軽商用バンには、ホンダのN-VANやスズキ・スペーシアベースもありますが、FF乗用車ベースで荷室長が大きく異なることから、ここでは別カテゴリーとして扱いたいと思います。

キャンピングカーユーザーにとって、この「4メーカーで共通の車両が採用されている」という事実は、「全国規模で部品調達が容易であり、多くの整備工場で構造が認知されている」という点で、旅先でのトラブル発生時の対応拠点の多さという大きなメリットに繋がっています。

第7章:整備現場から見たエブリイの適性とポテンシャル

自動車整備およびキャンピングカーのメンテナンスを担うCSSファクトリーの視点から、エブリイのベース車両としての特性を以下に整理します。

1. 架装に対する空間効率と足回りのチューニング

エブリイの後部荷室は、タイヤハウスの突出がなくフラットな床面を持ち、サイドパネルも垂直に近い形状をしています。断熱材の施工や家具・電装品の配置においてデッドスペースが生じにくく、空間効率に優れています。また、リアサスペンションにはスズキが「ITL(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)」と呼ぶ3リンク式リジッドアクスル(コイルスプリング)が採用されています。

一般的な商用バンは、空荷(0kg)から最大積載(350kg)までの幅広い重量変動に対応するため、サスペンション設定に妥協点を持たざるを得ません。しかし、キャンピングカーは家具や設備が常設されるため、重量の変動が少ないという特徴があります。この特性により、キャンピングカーでは架装後の定常的な重量に合わせてコイルスプリングのバネレートやショックアブソーバーの減衰力を最適化する、本来の意味での足回りの「チューニング」を施すことが可能です。CSSファクトリーでは、それぞれの車両の架装重量に合わせた最適なサスペンションセッティングの提案も行っています。

2. FFヒーターおよび電装系設置の親和性

車中泊用のFFヒーターを設置する際、エブリイは車体下部のスペースが確保しやすいため、本体の吊り下げや燃料タンクからの配管分岐を、FFヒーターメーカーの安全基準に従って施工することが比較的容易です。

3. 部品供給と架装後のメンテナンス性

エブリイは商用利用を前提としているため、エンジンオイル、冷却水、ブレーキ等の消耗部品へのアクセスが考慮されています。特に、フロントシート下にエンジンが配置されているため、後部荷室に床張りや家具の固定を行っても、フロントシートを上げるだけでエンジンルームにアクセス可能です。第3章で触れたリアミッドシップ期のような「整備時の架装物分解」が発生しないことは、確実な予防保全を行う上で非常に重要な要素です。

4. 整備現場からの「キャンパーベース車」に対する提案

最後に、架装・整備の観点から今後のキャンパーベース車両に対する一つの提案を記します。

それは、「車いす仕様(ウィズシリーズ等)の低床フロア構造を応用した、キャンパー専用ベース車」の設定です。福祉車両のスロープ設置のために掘り下げられたリアフロア空間は、キャンピングカーにおいて「大容量の床下収納」や「重量物(サブバッテリー等)の低重心配置」に非常に有用です。架装されていない状態(ドンガラ)の低床モデルが提供されれば、軽キャンパーの設計自由度と走行安定性はさらに向上すると考えられます。

おわりに:実用性を追求した系譜と今後の可能性

1964年のスズライトキャリイバンに始まり、積載性と耐久性を追求してきた軽商用車の歴史は、結果としてキャンピングカーに求められる空間効率や強度という要件を満たす設計へと繋がりました。

トラックとバンにおけるシャシー構造の分離、安全規格や福祉車両対応に伴うレイアウトの変遷、そして複数メーカーへのOEM供給によるプラットフォームの共通化など、エブリイの設計には用途に合わせた最適化のプロセスが反映されています。

現在、エブリイ及びそのOEM車をベースに多様な軽キャンパーが製作されています。私たちCSSファクトリーは、自動車メーカーの定めた基準に基づく点検と整備を通じて、車両の基本性能を維持した上で、ユーザーのニーズに応えた改善を行い、安全なドライブをサポートしていきます。

キャンピングカーは、架装して完成するものではありません。公道を走り出してから10年、20年と使い続けるためには、ベース車両の構造を理解し、架装部と車両側の双方を適切にメンテナンスしていくことが重要です。CSSファクトリーは、整備・修理・架装部の調整やリフォームを通じて、「長く使い続けられるキャンピングカー」を支えていきます。

車両のメンテナンスや架装部の調整やリフォームなど、修理や整備に関わるご相談がありましたら、CSSファクトリーまでお問い合わせください。