こんにちは、CSSファクトリーです。

今回は、国内のワンボックスバン市場で長年トヨタ・ハイエースのライバルとなっており、バンコンバージョンキャンピングカー(バンコン)のベース車両としても数多く採用されている「日産・キャラバン」の系譜を、技術的な視点から紐解いていきます。

日本の物流や建築現場を支える商用車として、また車中泊や本格的なキャンピングカーのベース車両として、キャラバンは半世紀以上にわたり進化を続けてきました。ハイエースが市場を牽引する中、キャラバンは「先進技術の早期導入」「走行性能」「パッケージングの最適化」を軸に改良を重ねています。その変遷を振り返ると、ボディ構造の強化、高出力エンジンの投入、多段トランスミッションの採用、そして安全装備の拡充が、キャンピングカーにおける積載性や安全性、長距離クルーズの快適性に繋がっていることがわかります。

本コラムでは、キャラバンの前史となるキャブライトやプリンス・ホーミーの誕生から、初代E20型、現行のE26型、そして次世代の電動化を見据えた技術的変遷を世代ごとに客観的な視点で解説します。

*この記事は、日産自動車の公式WEBサイトや日本自動車工業会が発行する「自動車ガイドブック」を参照して執筆しています。

前史:キャラバンの源流を形成した「キャブライト」と「ホーミー」の系譜

キャラバンという名が誕生する以前、日産の小型商用車には独立した2つの系譜が存在しました。日産系ダットサンブランドの「キャブライト」と、プリンス自動車工業の「ホーミー」です。

日産・キャブライトの誕生(1958年〜)

1958年、日産自動車はダットサン・トラックのシャシーを流用し、スペース効率を高めたセミキャブオーバー型の小型トラックおよびバンとして「ダットサン・キャブライト」を発売しました。商用車はボンネット型が主流だった当時、1.5ボックス的なパッケージングを採用し、限られた全長の中で荷室スペースを最大化する設計思想がここから始まりました。同モデルは1968年に「キャブスター」へと進化し、日産のキャブオーバー型商用車の基礎を構築します。

プリンス・ホーミーの誕生(1965年〜)

のちにキャラバンの姉妹車として歴史を共にする「ホーミー(Homy)」は、プリンス自動車工業から誕生しました。1965年、プリンス自工が前年に発売した小型キャブオーバートラック「ホーマー(Homer)」のバンバリエーション「ホーマーバン(V640型)」をベースに、乗用バスに仕立て直す形で、15人乗りのマイクロバスとして開発されたのが初代ホーミーです。車名の由来は「ホーマー」に「私のもの」を意味する「my」を組み合わせた造語とされています。1966年の企業合併後も「ニッサン プリンス・ホーミー」として車名が存続し、販売が継続されました。このホーミーが持つ多人数乗車を可能にする空間設計と堅牢なシャシーは、後のキャンピングカーやレジャービークルの土台となる要素を備えていました。

これら「ダットサン・キャブライト(キャブスター)」と「プリンス・ホーミー」の流れが統合される形で、次世代の中型キャブオーバーバン「キャラバン」の構想に繋がっていきます。

第1章:多目的キャブオーバーワゴンの誕生(初代 E20型:1973年〜1980年)

トヨタ・ハイエースに対する日産の対抗モデルとして、1973年に初代キャラバン(E20型)がデビューしました。

先進のパッケージングとホーミーとの統合

E20型キャラバンは、日産初の本格的中型フルキャブオーバーバンとして開発されました。エンジンを前席下に配置するフルキャブオーバースタイルを採用し、フロントからルーフにかけてなだらかな曲線を描くデザインを取り入れています。ロングホイールベースの採用により、高速走行時の直進安定性と室内空間の確保を両立しました。1976年には、ホーミーがフルモデルチェンジのタイミングでこのE20型の姉妹車として統合され、「キャラバン/ホーミー」というワンボックス・シリーズの体制が確立します。

エンジンとサスペンションの構成

当初のエンジンは1.5Lの「J15型」、1.6Lの「J16型」、2.0Lの「H20型」ガソリンエンジンが設定されました。H20型は実用域でのトルク特性に優れ、積載時にも安定した走行性能を発揮しました。モデルライフ後半には、2.2Lの「SD22型」ディーゼルエンジンが追加されています。サスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン式独立懸架、リアに半楕円リーフスプリングを採用。この構成は商用バンの基本として現行モデルに至るまで受け継がれています。E20型がもたらしたフラットな荷室は、車中泊やキャンパー架装において多様なレイアウトを可能にしました。

第2章:直線基調のデザインとターボディーゼルの導入(2代目 E23型:1980年〜1986年)

1980年、スクエアで機能的な直線基調のデザインを採用した2代目(E23型)が登場します。

居住性の向上とイージードライブ化

E23型はボディサイドの丸みを抑えることで、室内幅と室内高を拡大しました。バンとしての積載効率が向上するとともに、乗用ワゴンモデルである「コーチ」の居住性も改善されています。フロントには大型の角型ヘッドランプを採用しました。この世代からラジアルタイヤの標準化やフロントディスクブレーキの採用拡大が進み、制動性能と走行安定性が向上。また、オートマチック(3速AT)が設定され、運転負担を軽減するイージードライブ化が進みました。

ターボディーゼルの導入

エンジンの進化もこの世代の特徴です。自然吸気の「SD23型」(2.3L)ディーゼルに加え、1982年にはターボチャージャー付きディーゼルエンジン「LD20T型」(2.0L)が搭載されました。国産ワンボックス市場では、三菱・デリカのターボディーゼル導入(1984年)などに先駆けた早期の採用例のひとつであり、ターボ過給によるトルクと出力の向上は、重量物を積載した状態での長距離移動の負担を軽減しました。走行性能を重視するキャラバンの方向性は、この時代に定着し始めます。

第3章:乗用仕様の充実とV6エンジンの搭載(3代目 E24型:1986年〜2001年)

1986年に登場した3代目(E24型)は、RVブームを背景に約15年間にわたり製造されたモデルです。ハイエース(100系)と市場で競合し、装備やエンジンのバリエーションを拡大しました。

ラグジュアリー仕様の確立とキャンパー架装

E24型は、「コーチ(乗用ワゴン)」グレードの装備を充実させました。「シルクロード」や「リムジン」といった上位グレードには、キャプテンシートやツインムーンルーフなどが設定されています。バンには全長を延長した「スーパーロング」や室内高を確保した「ハイルーフ」が設定され、ベッドやギャレーを常設するバンコンのレイアウトが容易になったことから、キャンピングカーのベース車両としての需要も高まりました。

TD27型ディーゼルとV6ガソリンエンジンの採用

ディーゼルエンジンには、ギア駆動のOHVを採用した「TD27型」(2.7L直列4気筒)が搭載されました。その後、ターボ仕様の「TD27T型」さらにインタークーラー付きターボを備えた「TD27Ti型」へと進化していきます。また、市場の注目を集めたのがガソリン車への「VG30E型」(3.0L V型6気筒)の搭載です。セドリック/グロリアに初搭載され、フェアレディZにも採用されたV6エンジンをキャブオーバー型ワンボックスにも登載し、優れた動力性能で評価されました。なお、TD27TとVG30E搭載車は「GT」というグレード名が与えられています。1996年9月の仕様変更では、3.2L NAの「QD32型」がバンのAT車に設定され、1999年6月のマイナーチェンジでは、ガソリンエンジンが「KA20DE型」及び「KA24DE型」に換装されると共に、キャラバンとホーミーが「キャラバン」に統合され、コーチ仕様が廃止されています。

4WDの登場

1987年10月には、TD27型ディーゼルエンジンとの組み合わせでパートタイム式4WDが新たに設定されました。この4WDシステムは、D21型ダットサントラックおよびテラノ系の駆動系を応用したものであり、副変速機を備えたトランスファーを介した本格的なパートタイム4WDとして投入されました。副変速機付き本格4WDの投入は、未舗装路や悪条件のキャンプサイトへのアクセス性を高め、レジャー用途での走破性に対する要求にも応える形となりました。なお、副変速機は、E25型へのフルモデルチェンジに際して廃止されています。パートタイム方式はE25型や現行のE26型に至るまで一貫して踏襲されており、フルタイム4WDは採用されていません。

エルグランドの誕生

1997年5月には、E24型キャラバン/ホーミーの乗用モデルから派生する形で、より上質な乗用ミニバン「キャラバン・エルグランド」「ホーミー・エルグランド」が登場しました。商用車然としたキャラバン/ホーミーの乗用グレード(コーチ)とは一線を画す専用の内外装や快適装備を備えた高級ミニバンとして展開され、1999年7月には車名が「エルグランド」に統一されています。これにより、実用性を重視するキャラバン/ホーミー(コーチ)と、乗用車としての快適性を追求するエルグランドという棲み分けが明確化されました。なお、E24型キャラバン/ホーミーのコーチ自体はグレードを縮小しながらも、前述のように1999年6月まで継続生産されました。

第4章:衝突安全基準への対応とパッケージングの変更(4代目 E25型:2001年〜2012年)

2001年、フルモデルチェンジにより4代目(E25型)が登場しました。この世代から「ホーミー」の名称が廃止され、「キャラバン」に統合されています。

ノーズの延長による衝突安全性の確保

E25型の主な技術的変更は、前面衝突安全基準に対応するためのボディ構造の刷新です。クラッシャブルゾーンを確保するため、ノーズを前方に延長するパッケージングが採用されました。

これに伴い、最も短いボディはE24型の全長4420mm・ホイールベース2375mmに対し、E25型では全長が4ナンバー枠上限の4695mmへ、ホイールベースが2415mmへと変更されました。全長が275mm延長されたのに対し、ホイールベースの延長はわずか40mmに留まっています。また、荷室長についてもE24型の2785mmからE25型では2800mmへと15mmの拡大に留まっています。これらの数値からも、全長の延長分の大部分がフロントのクラッシャブルゾーンの確保に充てられたことがわかります。

なお、E24では4ナンバーフルサイズで全長4695mmのモデルが「ロングボディ」と呼ばれていたことからか、E25ではシリーズ中最も全長の短い4695mmのモデルが「ロングボディ」となり「標準ボディ」の呼称はディスコンになりました。

ZD30DDTi直噴ディーゼルターボの特性

エンジンは、当初はガソリン仕様はE24から継続採用された「KA20DE / KA24DE」でしたが、後に「QR20DE / QR25DE」に換装されました。ディーゼルには「ZD30DDTi型」(3.0L直列4気筒DOHC直噴ターボ)が搭載されています。高圧燃料噴射と可変容量ターボ(VGT)を組み合わせたこのエンジンは、低回転域から高いトルクを発揮し、力強い走行性能が重量のある架装車や積載量の多いユーザーから一定の支持を得ていました。

多人数乗車の実用ユーザー向けグレード展開

E25型の乗用モデルは当初「コーチ」のみのシンプルな構成でしたが、2003年5月のマイナーチェンジで、8人乗りコーチに豪華版の「シルクロード」グレードが追加されました。シルクロードはE24型時代に廃止されて以来8年ぶりの復活であり、乗用登録(3ナンバー)でありながら多人数乗車に対応する実用ワゴンとしての性格を持つ仕様として展開されました。しかしながら、ニーズが限定的だったからかシルクロードは2009年1月の仕様向上を機に廃止となっています。

第5章:現行モデル「NV350」の誕生と進化(5代目 E26型:2012年〜現在)

市場シェアの拡大を目指し、パッケージングの見直しを図って2012年に投入されたのが現行モデルの5代目(E26型)です。デビュー時は「NV350キャラバン」として販売され、2021年のマイナーチェンジで再び「キャラバン」へ車名を戻しています。

フルキャブオーバーへの回帰と荷室空間の確保

E26型は、ハイエースを徹底的に研究し、衝突安全性を確保した上でフロントノーズの短縮を実現しました。その結果、ロングボディはE25型と同じ全長4695mmでありながら、荷室長を250mm拡大し、ハイエースのロングボディを上回る荷室長3050mmを確保することに成功しています。ボディサイドパネルは垂直に近い角度で立ち上げたことにより、実質的な荷室を拡大した四角い荷室形状が採用されています。側面には「ユーティリティナット(M6ネジ穴)」が標準装備されたことで、車体に加工を施すことなく棚やベッドを固定でき、架装メーカーやDIYユーザーから高く評価されています。E26型で特徴的なのは、ハイエースと同様に全幅1880mmの「スーパーロング・ワイドボディ・ハイルーフ」仕様が設定されていることに加え、ナローボディにロング・ハイルーフ仕様が設定されていることです。E26型スーパーロングボディのホイールベースは、ハイエースの3110mmに対して2940mmと170mm短いことも相まって、ナロースーパーロングは扱いやすさが光る設定となっています。

先進安全技術の導入とトランスミッションの多段化

日産は乗用車向けの先進技術をキャラバンにも順次投入しています。車両周囲の映像を表示する「インテリジェント アラウンドビューモニター」を国内の商用バンとして初採用し、死角の多い架装車両の取り回しにおいて有用な機能となっています。2017年には「インテリジェント エマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)」も標準装備化されました。

2021年にはガソリン車のトランスミッションが5速ATからジヤトコ製の「7速AT(7M-ATx)」へと多段化されました。クロスレシオ化されたギア比により、滑らかな加速と高速走行時の静粛性向上が図られています。

新世代ディーゼル「4N16型」への換装

2022年のディーゼル車のマイナーチェンジでは、排出ガス規制に対応するため、搭載エンジンが従来の「YD25DDTi型」から、三菱自動車工業製の「4N16型」(2.4L直列4気筒DOHC直噴ターボ)へと換装されました。4N16型は、三菱のピックアップトラック「トライトン」やミニバン「デリカD:5」に搭載される4N1系と基本設計を共有しており、アルミニウム製シリンダーブロックにより軽量化が図られています。尿素SCRシステム(アドブルー)の採用により、環境性能を向上させた上で、最高出力132ps、最大トルク370Nmを確保しています。

4N1系の技術的な特徴は、二次バランサー機構「サイレントシャフト」が採用されていることです。この機構は三菱が特許を持つ配置方式で、かつてポルシェとの間でクロスライセンス契約(三菱のバランサー特許とポルシェのトランスアクスル技術を相互に利用する契約)が結ばれた経緯を持つことでも知られています。ディーゼル特有の振動や騒音が抑えられており、7速ATとの組み合わせにより、滑らかな乗り味を実現しています。この静粛性と出力特性は、キャンピングカーにおいても長距離移動を伴う旅での快適性の向上に繋がっています。

第6章:次世代のキャラバンへの展望

ハイエースとは異なり、キャラバンの次期モデルに関する情報は自動車雑誌のスクープ記事やWEBメディアなどにもほとんど掲載はありません。将来的には、先日販売開始となった新型エルグランドのように「e-POWER」が導入される可能性もあるかもしれませんが、2026年7月現在ではその噂の煙も無いのが実情です。

個人的な期待を込めると、次期キャラバンは日産と三菱のアライアンスを最大限に活用して、キャラバンとデリカ・カーゴを兄弟車として開発し、日本とアジア圏を主戦場にしたキャブオーバー型ワンボックスとして継続して欲しいと思っています。エンジンには、4N16ディーゼルのマイルドハイブリッド化や、PHEVの展開にも期待したいところですが、果たしてどうなるでしょうか。

まとめ:CSSファクトリーの取り組み

初代E20型から現行のE26型に至るまで、日産・キャラバンはトヨタ・ハイエースの動向を見据えながら、大排気量ディーゼルエンジンや3リッターV6エンジンの搭載、ユーティリティナットの標準化、先進安全装備の採用、そして最新ディーゼルエンジンと7速ATの採用などで進化を続けてきました。ハイエースと同等の実用性に加え、ハイエースを上回ると評価されることも多いハンドリング性能は、多くのキャンピングカーオーナーからも支持されています。

CSSファクトリーの母体であるボディショップハタケヤマは、はたらくキャラバンの鈑金塗装や車検整備、架装部の修理について多くの実績を積んでまいりました。現行の4N16型ディーゼルや電子制御の7速AT、先進安全技術の整備から、歴代モデルの事故修理まで、車両の特性を熟知した自動車整備士及び車体整備士資格を持つスタッフが対応いたします。経験に基づく確かな技術と適切な管理を通じて、キャラバンベースのバンコンキャンピングカーオーナーの皆様に、確実なサポートを提供してまいります。