こんにちは、CSSファクトリーです。
今回は、近年キャンピングカーや車中泊車のベース車としても注目されている三菱・デリカD:5の系譜を紐解いていきます。
デリカは、1968年に600kg積のキャブオーバートラックとして誕生しました。その後、ワンボックスの乗用ワゴン「デリカコーチ」、日本初のキャブオーバー4WDワゴンを擁した「デリカスターワゴン」、フロントエンジン化した「デリカスペースギア」と世代を重ね、2007年に横置きFFベースの乗用車系プラットフォームを用いた「デリカD:5」へと移行し現在に至っています。
デリカの歴史をたどると、商用キャブオーバー車から乗用ワゴンが育ち、パジェロと4WDのメカニズムを共有して「オフロードのデリカ」というイメージを確立していく過程が見えてきます。ボディ構造はラダーフレームからモノコックへ、レイアウトはキャブオーバーからフロントエンジン、さらに横置きFFへと移っていきました。そしてもうひとつ見逃せないのが、デリカは初代と3代目に、メーカー自身がキャンピングカーをカタログモデルとして設定していたことです。
今回は、初代デリカから2026年に大幅改良を受けた現行デリカD:5までを、キャンピングカーのベース車という視点も交えながら順に追っていきます。
*この記事は、三菱自動車の企業サイト「車の歴史」、デリカ誕生55周年スペシャルサイト、ニュースリリース、自工会発行の「自動車ガイドブック」、三栄書房「~のすべてシリーズ」、四駆専門誌「CURIOUS」、当時のカタログを参照して執筆しています。
第1章:初代デリカ(1968年〜)600kg積トラックとして誕生
1968年7月、三菱は小型トラック「デリカ」を発売しました。当時、積載量1トン未満の小型四輪トラックの需要が拡大しており、三菱は前年の1967年に発売したボンネット型の「コルトトラック」に加えて、キャブオーバー型のデリカを投入しました。車名は「デリバリーカー」に由来し、さまざまな道路状況で乗員や荷物を確実に運ぶクルマという意味が込められています。
デリカトラックは、クラス初となる3人乗りのキャビンと600kgの最大積載量を持ち、コルト1100と共通の1.1L直列4気筒OHV(KE44型)エンジンを搭載していました。キャブオーバー型を採用したのは、積載能力や居住性、小回り性能を重視したためです。
翌1969年4月には、ワンボックスボディの「ライトバン」「ルートバン」と、3列シート9人乗りの乗用モデル「デリカコーチ」が追加されます。コーチは3列すべてを3人掛けとし、ラジオやヒーター、レザー張りのシートといった乗用車並みの装備を備えていました。このコーチが、後のスターワゴン、スペースギア、D:5へと続く乗用デリカの起点となります。
1971年には、エンジンを1.4L(4G41型 ネプチューン)に換装した「デリカ75」へと発展し、トラックは750kg積となりました。
メーカー純正のキャンピングバン(1972年)
キャンピングカーの視点で注目したいのが、1972年7月に発売された「デリカ キャンピングバン」です。75バンをベースにポップアップルーフを備え、上段ベッドやハンモックを標準装備し、キッチンやレンジもオプションで用意されていました。
1970年代にもキャンピングカーブームがあり、スズキ・エブリイの系譜で取り上げた「キャリイバンキャンピングカー」や、日産・キャラバンの系譜で取り上げた「キャラバン・キャンピングカー」など、メーカー自身のカタログモデルとして、ワンボックスバンベースのキャンピングカーが設定されていました。ポップアップルーフで就寝スペースを上方向に確保するという手法は、マツダ・ボンゴの系譜で紹介した1995年のボンゴフレンディの「オートフリートップ」にも通じる発想です。
その後、1974年12月にはマイナーチェンジが行われ、ヘッドランプが4灯式に変更されました。なお、乗用のコーチは1975年に生産を終え、乗用デリカは2代目の登場まで一時途絶えることになります。
第2章:2代目デリカ(1979年〜)「スターワゴン」の誕生と日本初のキャブオーバー4WDワゴン
1979年6月、デリカは初のフルモデルチェンジを受けて2代目となりました。全幅は小型車枠いっぱいまで拡大され、乗用モデルは「デリカスターワゴン」として復活します。当時の国内市場では、商用ワンボックスをベースにした3列シートの乗用ワゴンの需要が拡大しており、スターワゴンはそのニーズに応えるシリーズとして打ち出されました。
発売当初の乗用モデルは、1.6L(G32B型 サターン)エンジンに、ワンボックス車として初となる5速マニュアルを組み合わせていました。1980年には1.8L(G62B型 シリウス)エンジンを搭載したハイルーフ車が追加されています。
日本初のキャブオーバー4WDワゴン(1982年)
デリカの性格を決定づけたのが、1982年10月の4WD仕様の追加です。国内のキャブオーバーワゴンとして初めての4WD車でした。
4WD仕様は、フォルテ/初代パジェロと共通のラダーフレームと、フロントがダブルウィッシュボーン式トーションバースプリング、リアがリーフスプリングのリジッド式のサスペンションを組み合わせています。4WD機構も、同様に副変速機付きのパートタイム4WDとなっています。ワンボックスのボディを持ちながら、中身は文字どおり本格的なクロスカントリー4WDでした。最低地上高は190mmを確保し、フロントにはグリルガードを備え、オプションでリアLSDや電動ウインチも用意されていました。一方で、タイヤサイズは195SR14にとどまっていました。
1983年には4WD車のエンジンが2.0L(G63B型)に拡大され、最上級グレード「GLXエクシード」が追加されました。同時に、高度計と傾斜計の2連メーターも追加されています。1984年には、パジェロと同型の2.3Lディーゼルターボ(4D55型)も設定されました。なお、4WD仕様のトランスミッションは5速マニュアルのみでした。
初代パジェロが登場したのも1982年です。この年を境に、三菱は「4WDの三菱」というイメージを築いていきます。
ただし、1980年代に登場した商用ワンボックスベースの4WD車は、デリカだけがタフだったわけではありません。トヨタはハイラックス系、日産はダットサントラック系、いすゞはロデオ系と、各社ともピックアップトラックの駆動系をベースにした頑丈な構造を採用していました。それでもデリカのオフロードイメージが突出していたのは、グリルガードと大径タイヤによる高い車高の外観、同じメカニズムを持つパジェロの存在、そして三菱のイメージ戦略の成功によるところが大きかったのではないかと担当者は考えています。
第3章:3代目デリカ(1986年〜)モノコック化とRVブームの主役へ
1986年6月、デリカはスペース効率に優れたフルキャブオーバー型を踏襲した3代目にモデルチェンジしました。
ボディ構造はモノコックへ
3代目で最も大きく変わったのはボディ構造です。軽量化とボディ剛性の向上を目的に、2代目のラダーフレームからモノコックへ変更されました。4WD車は、パジェロ系のフロントサスペンションを流用する目的からか、フロントにサブフレームを備え、そこにサスペンションと駆動系を組み付けています。これにより、4WD機構はパジェロ系の副変速機付きパートタイム式を受け継いでいますが、2代目のようにパジェロとフレームを共有する構成ではなくなりました。このモノコックという基本構造は、次のスペースギアにも受け継がれていきます。
豪華装備の乗用ワゴン
乗用ワゴンのスターワゴンは、バブル期へ向かう時代を背景に装備を充実させていきました。2WD車には、後席ルーフの左右をガラスとした「クリスタルライトルーフ」が設定され、世界初とされる電動サンシェードも備わりました。2列目には回転対座が可能な「ロングスライドパーソナル回転シート」が採用され、ディーラーオプションではテレビや対座時に使うテーブルといった装備も用意されていました。
4WD車はフロントガードバー、サイドステップ、リアアンダーガードでオフロード車らしい外観に仕立てられ、上級グレード「エクシード」には、当時のクロスカントリー4WDで一般的なサイズだった215R15タイヤが採用されました。なお、215R15タイヤはその後スターワゴン4WD全グレードに展開されています。
3代目デリカスターワゴン4WDの標準ボディのホイールベースは2,240mmと、初代パジェロのショートボディ(2,350mm)より110mm短く、オフロード走行では前後輪の間で車体の底を擦りにくい寸法です。担当者の経験でも、地形によってはデリカスターワゴンがパジェロと同等以上の機動性と走破性を見せたことがありました。短いホイールベースを持つことが、ワンボックスの見た目に反してデリカが本格的な4WD車として評価されていた理由のひとつでした。
エンジンは当初、2.0Lガソリン(G63B型・キャブレター仕様)と2.5Lディーゼルターボ(4D56型)の2種類でした。ガソリンエンジンは1987年9月に電子制御燃料噴射のECIマルチ化され、1988年8月には4WD車にも4速ATが追加されています。
コラム:3ナンバー税制と「全高2m」の壁
3代目の4WD車には、登場当初ハイルーフが設定されていませんでした。理由は全高です。
小型自動車(5ナンバー)の枠は、全長4.7m以下、全幅1.7m以下、全高2.0m以下、ガソリン車で排気量2,000cc以下でディーゼル車は排気量に制限なしというものです。デリカの場合、地上高の高い4WD車にハイルーフを組み合わせると全高が2mを超えてしまい、排気量にかかわらず普通自動車(3ナンバー)になってしまいます。1980年代の3ナンバー車は、物品税や自動車税の負担が5ナンバー車より大きく、このクラスのワンボックスワゴンにとっては越えられない壁となっていました。
その状況を変えたのが、1989年の税制改正です。消費税の導入に合わせて物品税が廃止され、自動車税も排気量で区分されるようになったことから、3ナンバー車の取得や維持の負担は大幅に軽くなりました。これを受けてデリカスターワゴンにも1989年8月に3ナンバー車が追加され、2.4Lガソリン(4G64型)が設定されるとともに、4WD車にもハイルーフとクリスタルライトルーフが設定されたのです。4WDのガソリン車は、この2.4Lエンジンと4速ATの組み合わせも選べるようになりました。
カタログモデルとして設定されたキャンピングカー
3代目でも、メーカー自身がキャンピングカーをカタログモデルとして用意していました。1987年6月にはバンのロングボディをベースにした「キャンパーAタイプ/Bタイプ」が登場し、続いて1990年4月に「デリカキャンパー」と「デリカキャンパーロング」、1991年6月に「デリカキャンピングカーシリーズ」が発売されています。いずれも8ナンバーのキャンピングカーですが、三菱の販売店で正規販売モデルとして購入できました。さらに、1994年にフルモデルチェンジした3代目トラックの4WD車をベースに、1996年2月にはキャンパー仕様の「JB470」も発売されています。
デリカには、初代のキャンピングバンに加えて、3代目にもメーカーのカタログモデルとしてキャンピングカーがラインナップされていたことになります。デリカとキャンピングカーの関係は近年になって始まったものではなく、長い歴史があるのです。
RVブームとデリカスターワゴン
80年代後半から90年代前半にかけては、クロカン4WDブームとバブル景気が重なり、オートキャンプやスキーの流行もあって、デリカスターワゴンはパジェロと並ぶ三菱の人気車種となりました。読者の皆さんの中にも、デリカスターワゴンで家族とキャンプやスキーに出かけた思い出をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
蛇足ながら、担当者も90年代後半に中古で買った1990年式デリカスターワゴン4WD(ディーゼル・エクシード AT)を所有していました。車中泊やキャンプをはじめとするアウトドアの相棒として、長く付き合った一台です。
第4章:4代目デリカスペースギア(1994年〜)フロントエンジン化とロングボディの追加
1994年5月、デリカは4代目「デリカスペースギア」にモデルチェンジしました。最大の変更点は、エンジンを前席の下から車体前部に移したフロントエンジンレイアウトの採用です。前面衝突に対する安全性を高めるとともに、運転席と助手席の間を通れるウォークスルーを実現したフラットフロアも採用しています。
この時代、乗用ワンボックスワゴンでは、衝突安全性への要求の高まりからキャブオーバー型が淘汰され、フロントノーズを持つセミキャブオーバーへの移行が進んでいました。日産・バネットセレナや同ラルゴ、マツダ・ボンゴフレンディなど、前席下のエンジン搭載位置を踏襲したまま前輪だけ前に出したレイアウトとは異なり、スペースギアではフロントエンジン化に踏み切ったことが特徴でした。
パワートレインとスーパーセレクト4WD
パワートレインは、2代目パジェロと同じ2.8Lディーゼルターボ(4M40型)、3.0L V6ガソリン(6G72型)、2.4Lガソリン(4G64型)などです。4WD方式には、2WD・フルタイム4WD・直結4WD(Hi/Lo)を走行状況に応じて切り替えられる「スーパーセレクト4WD」が採用されました。パートタイム4WDとフルタイム4WDの長所を兼ね備えた方式です。
4WD車のタイヤサイズは、上位モデルが225/80R15、下位モデルが215R15でした。3代目の上級仕様が履いていた215R15から、上位モデルではサイズアップが図られたことになります。
乗用モデルにも用意されたロングボディ
スペースギアのもうひとつの特長が、乗用モデルにも用意された全長5mを超えるロングボディです。標準ボディに対してホイールベースは200mm長い3000mmとなり、全長は400mm長い5085mm(4WD)となっていました。当時の基準では長大なボディで街乗りでの扱いやすさなどが懸念されたからか販売台数は多くありませんでしたが、フラットで長大なスペースを持つことから、現在の視点で見るとキャンピングカーのベース車として魅力的に映ります。
ボディ構造とサスペンション
ボディは3代目と同様のモノコックで、パジェロのような独立したラダーフレームではありません。ただし、車体には大断面のストレートフレームが組み込まれており、同じ1994年に登場したパジェロミニや、1999年の3代目パジェロが採用したビルトインフレーム式モノコックに通じる構造といえます。フレーム前部にはクラッシャブルゾーンが設けられ、衝突安全性を高めていました。
フロントサスペンションは、パジェロ系のダブルウィッシュボーン式が踏襲されました。リアはコイルリジッド化されましたが、2代目パジェロの3リンク式に対して、スペースギアは5リンク式を採用していました。なお、スペースギアのリアサスペンションは、2026年9月に公開された5代目パジェロと同じレイアウトです。

コラム:5リンク式コイルリジッドという選択
スペースギアが、当時のパジェロの3リンク式ではなく5リンク式のリアサスペンションを採用した理由を三菱が説明した資料は見当たりません。ただ、同じ時代を見渡すと、5リンク式コイルリジッドは「乗用ワゴンの快適性」と「リジッドアクスルの堅牢性」を両立する形式として、いくつかの車種に採用されています。
日産バネットの系譜で紹介したように、1986年の2代目バネットラルゴと初代テラノは、どちらも5リンク式コイルリジッドを採用していました。三菱でも、1994年のパジェロミニのリアサスペンションは5リンク式コイルリジッドです。
5リンク式では、車軸の前後方向の位置決めを上下2本ずつのトレーリングリンクで、横方向の位置決めをラテラルロッドで受け持ちます。リンクの配置の自由度が高く、乗り心地や操縦安定性を調整しやすい形式です。
この構成は、ラダーフレームを持つ本格的なクロスカントリー4WDでも採用されています。1987年の日産・Y60サファリや、トヨタ・ランドクルーザー300を始めとするトヨタGA-FプラットフォームのSUVのリアサスペンションも、5リンク式のコイルリジッドです(トヨタの呼称は「トレーリングリンク車軸式」)。
そして2026年9月、三菱は5代目パジェロのリアサスペンションに、新開発の5リンク式コイルリジッドを採用しました。ベースとなるピックアップトラックのトライトンは、荷台に荷物を積むことを前提にリーフスプリングのリジッドを使っています。これに対してパジェロは、上下方向の荷重への強さよりもタイヤの接地性を重視して5リンク式に変更したと説明されています。なお、デリカスペースギアや新型パジェロがトレーリングアーム上にコイルスプリングをマウントしているのに対し、トヨタのGA-Fプラットフォームでは、コイルスプリングをホーシング上にマウントしている、という違いがあります。技術的にはどちらが優れているとは言えませんが、前者は空間効率、後者は堅牢性に有利にしやすい構成だと考えられます。
スペースギアから32年を経て、パジェロが同じ形式を採用したのは興味深いところです。
商用系:デリカカーゴと3代目の併売
スペースギアには、4ナンバーの商用バン「デリカカーゴ」も設定されていました。デリカカーゴの4WDは、パートタイム4WDに195R15タイヤ、エンジンは4D56型という組み合わせで、乗用のスペースギアとは駆動方式もエンジンも異なる仕様でした。
また、3代目のスターワゴンは、スペースギアの登場後も市場で棲み分ける形で併売されました。後期にはディーゼルの4WD・GLXのみにグレードを集約し、1999年まで販売が続いています。
1999年には、商用のデリカバン、デリカトラック、デリカカーゴが、マツダ・ボンゴ系のOEM車に切り替わりました。この経緯はマツダ・ボンゴの系譜で紹介しているとおりです。
排出ガス規制と晩年
スペースギアは、1997年のマイナーチェンジで4M40型ディーゼルの燃料噴射を機械式から電子制御化して出力を向上させ、4WDのガソリン車は3.0L V6に集約されました。
その後、ディーゼル車に対する排出ガス規制の強化に対応することが難しくなり、ディーゼル車は2004年に廃止されます。ロングボディもこのときに廃止され、最終的には3.0L V6ガソリンのみとなりました。2007年1月に国内販売を終えるまで、販売期間は約13年に及びます。
第5章:デリカD:5(2007年〜)横置きFFプラットフォームへの転換
2007年1月、デリカは5代目「デリカD:5」に生まれ変わりました。車名の「D」はデリカ、「5」は5代目を表しています。
パジェロからアウトランダーベースへ
デリカD:5は、商用ユースも想定したエンジン縦置きFRベースの構成から、エンジン横置きFFベースの乗用車系プラットフォームを用いたミニバンへと大きく変わりました。プラットフォームは、2005年に登場したアウトランダーから採用が始まった三菱GSプラットフォームで、ギャランフォルティスやランサーエボリューションXにも使われたものです。ランサーエボリューションXは国内外のラリーで活躍していたことから、素性の良いプラットフォームであるといえそうです。
車高を上げたSUV的な外観から、フレーム付きのタフな構造だと誤解されることがありますが、構造としては乗用車系のモノコックです。そのうえでデリカD:5では、ピラーとルーフ、フロアを環状につなぐ「リブボーンフレーム」によって、ボディ剛性と側面衝突時の安全性を確保しています。4WDシステムもアウトランダー系の電子制御4WDとなり、2WD、4WDオート、4WDロックをダイヤルで切り替える方式になりました。
デリカD:5は、パジェロ系のコンポーネントを使っていた先代までから、アウトランダーやランサーエボリューションXと同じ乗用車系プラットフォームへ移ったモデルです。視点を変えると「デリカD:5は、パジェロとランエボのDNAを持つ」ということになるのかもしれません。
2019年のビッグマイナーチェンジ
デリカD:5は、2007年の登場から20年近く販売が続くロングセラーです。その間、2012年にはクリーンディーゼル車が追加されるなど、改良が重ねられてきました。
なかでも大きな変更となったのが、2018年11月に発表され、2019年2月に発売されたビッグマイナーチェンジです。フロントデザインは三菱の「ダイナミックシールド」に一新されました。外観だけでなく、前席より前の骨格も、2代目アウトランダー用に新たに開発された骨格をベースにしたものに刷新され、ステアリング系もデュアルピニオン式の新開発のものに置き換えられています。パワートレインはエクリプスクロスにも採用された改良型の2.2Lディーゼルターボに統一され、排出ガス浄化には三菱車として初めて尿素SCRが採用されました。ATも従来の6速から8速に換装され、運転支援機能「e-Assist」が全車に標準装備されるなど、車両型式は変わらないマイナーチェンジでしたが、内容はフルモデルチェンジに近いものでした。
2026年の大幅改良
さらに、2025年12月に発表され、2026年1月9日に発売された大幅改良では、フロントグリルと前後バンパーのデザイン変更とホイールアーチモールの追加に加え、8インチ液晶メーターが採用されました。最大の変更点は、アウトランダーPHEVなどに使われている四輪制御技術「S-AWC」の搭載で、NORMAL、ECO、GRAVEL、SNOWの4つのドライブモードが設定されています。
デリカD:5は、基本骨格とボディシルエットは2007年の登場時のものを受け継ぎながら、パワートレイン、4WD制御、安全装備は継続して改良されてきました。2025年度の販売台数が過去最高を記録したとも報じられており、登場から20年近くを経ても根強い人気が続いている車種です。
コラム:「デリカ」の名を持つ車たち
1999年以降、「デリカ」の車名は自社開発の乗用モデルだけでなく、ほかの車種にも使われるようになりました。
商用車のOEM車
1999年からは、マツダ・ボンゴ系のOEM車が「デリカバン」「デリカトラック」「デリカカーゴ」として販売されました。さらに2011年10月からは、日産NV200バネットのOEM車が「デリカD:3」「デリカバン」として供給され、この供給は2019年まで続いています。ボンゴとバネットについては、それぞれマツダ・ボンゴの系譜と日産バネットの系譜で詳しく紹介しています。
スズキ・ソリオベースの「デリカD:2」
2011年3月には、スズキ・ソリオのOEM車「デリカD:2」が登場しました。日本国内向けの車種で三菱がスズキからOEM供給を受けるのは、これが初めてです。デリカD:2はその後もソリオのモデルチェンジに合わせて世代を重ね、2015年にはソリオバンディットに相当する「デリカD:2カスタム」も加わりました。D:2、D:3、D:5と、車名の数字が車格を表すようになったのもこの時期です。
軽自動車の「デリカミニ」
デリカの名は軽自動車にも広がりました。2023年5月25日に発売された「デリカミニ」は、ミニバンの「デリカ」の名を冠した軽スーパーハイトワゴンですが、2020年に発売されたeKスペースの派生車種「eKクロス スペース」のマイナーチェンジモデルにあたります。4WDモデルには専用の165/60R15タイヤと専用ショックアブソーバーが装備され、発売前の予約注文の約6割を4WDモデルが占めていました。デリカミニはベースのeKスペースのフルモデルチェンジに合わせて、2025年10月29日には2代目に移行しました。既存機種のマイナーチェンジ版として登場したことから、初代は2年5か月という短いモデルライフに終わったことになります。
このように現在の「デリカ」は、ひとつの車種の名前というより、三菱のワンボックス/トールワゴン系のブランド名として使われています。キャンピングカーのベース車として見ると、「デリカ」の名を持つ車両には、ボンゴやNV200バネット、ソリオのOEM車も含まれていることになります。
第6章:キャンピングカー・車中泊のベースとしてのデリカD:5
デリカD:5は近年、キャンピングカーや車中泊車のベース車としても注目されています。三菱系の販売会社が手がけるポップアップルーフ仕様「D:POP」をはじめ、グランドモーターなど複数のビルダーがD:5ベースの車中泊仕様や内装キットを用意しています。また、特装車扱いですが3列目シート無しの仕様をオーダーできるのも親切です。
デリカD:5がベース車として選ばれる理由は、乗用ミニバンとしての乗り心地と静粛性を持ち、日常の足として使える車格でありながら、余裕のある地上高と4WDによるアウトドアイメージの高さではないかと思われます。加えて、乗用車系プラットフォームを持つ運転しやすいミニバンなので「普段使いのクルマで、週末はそのまま車中泊の旅に出る」という使い方に適したベース車であることが、商用バンベースのキャンピングカーとは異なる魅力ではないでしょうか。
一方で、乗用車系のミニバンであることから、架装の自由度や荷室空間のスペース効率は商用バンほどではありません。D:POPのポップアップルーフも、ボディ剛性に影響しないよう、リブボーンフレームを避けて開口部が設けられています。デリカD:5ベースの車両は、ベース車の構造を理解したうえで架装・整備することが大切です。
第7章:系譜から見えてくるもの
1968年の600kg積トラックに始まったデリカは、乗用ワゴンのコーチ、パジェロと同じメカニズムを持つスターワゴン4WD、モノコック化した3代目、フロントエンジン化したスペースギアを経て、横置きFFの乗用車系プラットフォームを用いたデリカD:5へと移ってきました。構造やレイアウトは世代ごとに大きく変わりましたが、「多人数が乗れる箱型のボディで、悪路にも対応する」という性格は、2代目の4WD追加以降一貫しています。
そして、初代のキャンピングバン、3代目のカタログモデルのキャンピングカー、現在のD:5ベースの車中泊仕様と、デリカは世代を超えてキャンピングカーと関わり続けてきました。
CSSファクトリーは、デリカD:5のような、日常使いや長距離ドライブの快適性に優れたミニバンベースのキャンピングカーや車中泊仕様の車検・整備・修理も対応しています。登場から年数を経たスターワゴンやスペースギアのように、足回りや錆、駆動系の経年劣化を見据えた整備が必要な車両についても、ベース車の構造と年式、使用状況を踏まえた点検と修理をご提案します。
三菱デリカをベースにしたキャンピングカーや車中泊車で気になることがありましたら、弊社のお問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。