こんにちは、CSSファクトリーです。
今回は、2026年10月4日に初代の発売から50年を迎えたトヨタ・タウンエースの系譜を紐解いていきます。
タウンエースは、1976年にライトエースとハイエースの中間に位置するキャブオーバー型のバン・ワゴンとして誕生しました。その後、豪華な装備のワゴンと姉妹車マスターエース サーフを擁した2代目、フロントエンジン化した「タウンエース ノア」と世代を重ね、乗用ワゴンは2001年にFFのノア/ヴォクシーへ、商用バンは2008年にダイハツ・グランマックス系のOEM車へと分かれて現在に至っています。
タウンエースの歴史をたどると、先に登場したライトエースとの関係が「下位車と上級車」から「販売店違いの兄弟車」へ変わり、商用キャブオーバー車から育った乗用ワゴンが独立していく過程が見えてきます。そしてタウンエースにも、メーカー自身がキャンパー仕様をカタログモデルとして設定していた時代がありました。
今回は、前史となる1970年のライトエースから、2026年7月に同型車の日本向け生産が終わった現行モデル、そして次期型の予想まで順に追っていきます。
*この記事は、トヨタ自動車75年史「車両系統図」、トヨタのニュースリリース、当時のカタログ情報などを参照して執筆しています。
第1章:前史 ライトエース(1970年〜)カローラのコンポーネンツで誕生
1970年11月、トヨタは積載量1トン未満のキャブオーバー型商用車の需要拡大に応えて、「ライトエース トラック」を発売しました。750kg積の3人乗りで、荷台には1方開きの低床と3方開きの高床の2種類が用意され、当時、クラス最大の積載量と荷台寸法とされていました。エンジンはカローラと共通の1,166cc直列4気筒OHV(3K型、68PS)で、エンジン以外の主要コンポーネンツもカローラから流用されています。
翌1971年2月には、ワンボックスボディの「バン」(3/6人乗り)と9人乗りの「ワゴン」が追加されました。バンの全長は3,870mm、全幅1,565mm、ホイールベースは2,050mmです。1973年には右側にもスライドドアを持つ5ドアのバンと、ワゴンのハイルーフ仕様が加わっています。販売はトヨタオート店でした。
第2章:初代タウンエース(1976年〜)ライトエースとハイエースの中間
1976年10月、ライトエースとハイエースの中間に位置するモデルとして「タウンエース」が登場しました。
当初の車種は、3/6人乗りのバンと8人乗りのワゴンの2系統で、エンジンは前席の真下に置かれ、バンには1.2L(3K-J型、64PS)と1.6L(2T-J型、93PS)、ワゴンには1.6L(85PS)が搭載されました。全長は3,990mm、全幅1,650mm、ホイールベースは2,195mmで、初代ライトエースのバンより全幅は85mm、ホイールベースは145mm大きくなっていました。ワゴンは3列シートで、2・3列目をフルフラットにできるほか、3列目を畳んで荷室を広げることもできました。
販売はトヨタカローラ店で、1600のバンとワゴンはトヨタオート店でも扱われています。生産はダイハツ工業が担い、1982年10月からはトヨタ車体も加わりました。
トラックの追加とジャストロー
1978年秋に、タウンエースにもトラックが追加されました。荷台は低床と高床に加え、ラジアルタイヤを履かせて床面を下げた「ジャストロー」が設定され、それぞれに標準とロングデッキが用意されています。エンジンは当初1.6L(12R-J型、80PS)でしたが、1979年秋に昭和53年排出ガス規制への適合のため、1.8L(13T-U型)に変更されました。
コラム:タイヤの外径で床を下げる
ジャストローは、リアタイヤの外径を小さくして荷台の高さを下げる手法です。1979年秋の変更では、後輪を10インチのダブルタイヤに改め、床面の地上高を軽トラック並みまで下げています。
小径タイヤで低床化する考え方は、その後の世代にも引き継がれました。1996年以降の商用バン(KR42V型)でも、一部グレードの後輪には225/50R12.5という小径のタイヤが使われています。
ワゴン需要への対応
ワゴンは1978年10月に1.8L(92PS)へ強化され、全高1,975mm/1,990mmのハイルーフが新設されました。1980年12月には3速ATと5速MT、2列目を後ろ向きにできるスライド式の対面シート、高級乗用車並みの装備を持つ「グランド エクストラ」が設定されています。トヨタはこれらを、急速に高まったワンボックスワゴン需要に対応したものと説明しています。
メーカー純正のキャンパー「キャニオン」(1982年)
キャンピングカーの視点で注目したいのが、1982年2月に設定されたキャンパー仕様の「キャニオン」です。サン&ムーンルーフ、2段ベッド、電動カーテン、ブロンズガラスなどを装備していました。三菱・デリカの系譜や日産・キャラバンの系譜でも触れたように、1970〜80年代には、メーカー自身がワンボックス車ベースのキャンピングカーをカタログモデルとして用意していました。タウンエースもその一台だったことになります。
第3章:2代目タウンエース(1982年〜)豪華ワゴン化とマスターエース サーフ
1982年11月、タウンエースは2代目にモデルチェンジしました。同時に、より豪華で個性的なワゴンを求める層に向けて、姉妹車の「マスターエース サーフ」が設定されています。マスターエース サーフはトヨタ店で販売された乗用ワゴン専用車で、商用バンの設定はありませんでした。外観は北米仕様に準じた角型4灯のヘッドランプと大型のウレタンバンパーを採用しタウンエースと差別化されました。
ワゴンは、バンの標準ルーフより少し高いミドルルーフを標準とし、さらにハイルーフも用意されました。どちらにもツインムーンルーフが設定されています。装備は非常に豊富で、アイスメーカー付きの冷温蔵庫や7スピーカーのオーディオ、カラーテレビまで用意されていました。
エンジンは当初、「レーザー2Y」と名付けられた1.8L(2Y型、95PS)のみでした。トランスミッションは5速MTと、この種のクルマとしては初めてのオーバードライブ付き4速ATです。
ラテラルロッド付き4リンクのリアサスペンション
2代目の機構面での大きな変更は、リアサスペンションです。リジッドアクスルはそのままに、ばねをリーフスプリングから、ラテラルロッド付き4リンク式のコイルスプリングに改めました。キャブオーバー型ワゴンとして日本初の採用とされています。なお、メーカーや機種によってラテラルロッドを含めて「5リンク式」と呼称する場合もありますが、基本的なリンクの配置は共通です。
日産・バネットの系譜で紹介したように、日産ではバネットラルゴが1986年に5リンク式のコイルリジッドを採用し、バネットはリーフスプリングのまま残りました。トヨタは、それより4年早くタウンエースのワゴンでリアをコイル化していたことになります。
年ごとに広がったバリエーション
2代目は、発売後もバリエーションを年々広げていきました。1983年4月に2.0Lディーゼル、同年5月にEFI付き2.0Lガソリン、1984年8月にターボディーゼル、1985年8月にスカイライトルーフ、同年11月に副変速機付きパートタイム4WD、1987年9月には電子制御サスペンション(TEMS)が追加されています。
ワゴン(2000EFI ロイヤルラウンジ、YR21G型)は全長4,315mm、全幅1,685mm、全高1,950mm、ホイールベース2,235mmで、エンジンは2.0L(3Y-EU型、97PS)です。バン(1600ガソリン デラックス、YR26V型)は全長4,240mm、全幅1,670mm、ホイールベース2,230mmで、1.3Lガソリン(4K型)、1.6Lガソリン(1Y型)、1.8Lディーゼル(1C型)が用意されていました。
1992年:ライトエースとのボディ統合
系譜の上で大きな転換点となったのが、1992年1月のマイナーチェンジです。このとき、ライトエースはタウンエースをベースとするモデルとして設定され、ボディが統合されました。1970年に先に生まれたライトエースと、その上級車として生まれたタウンエースは、ここで販売店違いの兄弟車になったのです。同じ1992年1月に、マスターエース サーフは生産を終えています。なお、このマイナーチェンジではすべてのボディパネルと内装が刷新されており、日産のフェアレディZがZ34から2022年にRZ34に変わった、あるいはレクサスISの2020年のビッグマイナーチェンジに近い内容だったと言えそうです。
第4章:3代目タウンエース(1996年〜)「ノア」のフロントエンジン化
1996年10月、乗用ワゴンは「ライトエース ノア」「タウンエース ノア」にモデルチェンジしました。両車は同一のモデルで、販売店の違いによりフロントのデザインが若干変えられています。
最大の変化はレイアウトです。エンジンと前軸を前席の下に置くキャブオーバーから、エンジンを車体の前端に縦置きするFRになりました。4WDはこの代からパートタイム式に代えてフルタイム式となっています。ボディは5ナンバー枠に収められ、3列シートの6/7/8人乗りで、フラットフロアによって3列間のウォークスルーができました。エンジンは2.0Lガソリン(3S-FE型、130PS)と2.2Lディーゼルターボ(91PS)で、ホイールベースは2,715mmと、2代目のワゴンより480mm長くなっています。
日産・バネットの系譜でも触れたように、1991年登場のバネットセレナはエンジン搭載位置は前席下のままセミキャブオーバー化し、1999年のモデルチェンジでFF化しました。1996年にはFFのホンダ・ステップワゴンが登場しており、このクラスのワゴンは「セミキャブオーバー+FF」に向かっていました。後輪駆動を残したタウンエース ノアは、その過渡期に位置するモデルで次期型ではFF化しています。
三菱・デリカの系譜で紹介したように、1994年のデリカスペースギアは、タウンエース ノアと同様のFRレイアウトでした。各社がキャブオーバー型から離れ、最終的には横置きFFに集約していく過程で、そのたどり方はメーカーごとに異なっていたことがわかります。
商用バンとトラック
一方、商用のバンとトラックは、ノアとは別の成り立ちで販売が続きました。商用の「タウンエースバン」(KR42V型)は1996年10月から2008年2月までFRのまま継続しました。
トラックについては、1999年6月にトヨタがライトエース トラックとタウンエース トラックのフルモデルチェンジを発表しています。しかし、このモデルチェンジは、マツダ・ボンゴの系譜で触れた1999年のボンゴのモデルチェンジと同様に、フロント周りは刷新されたものの、基本的な骨格やドアなどの外板は従来モデルのままとなっていました。1992年1月の外板刷新はマイナーチェンジでしたが、型式は維持していたのに対し、このモデルチェンジでは新たな型式を取得したため、フルモデルチェンジとして発表したのでしょう。搭載エンジンは1.8Lガソリン(7K-E型)と2.2Lディーゼル(3C-E型)で、4WDはパートタイム式からフルタイム式に改められました。最大積載量は標準デッキで750kg、ロングデッキで1,000kgとなっています。
第5章:ノア/ヴォクシー(2001年〜)乗用系はFFのミニバンへ
2001年11月、ライトエース ノア/タウンエース ノアがモデルチェンジして「ノア」のみのシンプルな名称になり、ネッツ店向けの姉妹車「ヴォクシー」が加わりました。この代から乗用ワゴンが独立し、商用車との関係はなくなります。トヨタ75年史ではノアを、日本におけるキャブワゴンブームの火付け役となったライトエースを始祖とする新世代ミニバン、と説明しています。
プラットフォームはまったく新しいFF方式で、5ナンバー枠を保ちながら広い室内と平らで低いフロアを実現し、運転席側にもリアスライドドアが設定され5ドアになりました。エンジンは2.0L直噴(1AZ-FSE型、152PS)、ホイールベースは2,825mmです。駆動方式はFFと、電子制御のアクティブトルクコントロール4WDでした。
1976年の初代タウンエースのワゴンから数えて25年、乗用ワゴンの系統はキャブオーバー、FRを経て、FFのミニバンへと移ったことになります。その後ノア/ヴォクシーは世代を重ね、2022年に登場した現行型では3ナンバーのボディとなり、2026年の一部改良では、福祉車両の一部を除いて全車ハイブリッド化されました。
第6章:商用タウンエース(2008年〜)ダイハツ開発・インドネシア生産へ
2008年2月、商用のタウンエースは全面的に切り替わりました。車両企画はダイハツとの共同で、開発と生産はダイハツが担当し、生産拠点はインドネシアのアストラ ダイハツ モーターです。ダイハツは同型車を2007年11月から、東南アジアを中心とする海外で「グランマックス」として販売していました。ライトエースの名も、この型の兄弟車として使われています。
ボディはショートノーズのスクエアな形状で、エンジンが前席の下に搭載されるセミキャブオーバーを採用しています。バネットセレナやラルゴ、ボンゴフレンディが一代限りで終わったセミキャブオーバーが新たに採用されたことは興味深いですが、軽箱バンのハイゼットが1998年以降セミキャブオーバーを採用し続けていたことから、その拡大版としてグランマックスが開発されたと仮定すると納得感の高いレイアウトではないかと思います。日本に導入されたバンは標準ルーフのみ、トラックは高床のみで、ホイールベースは共通の2,650mm、全長はバンが4,045mm、トラックが4,275mmです。エンジンは1.5L(3SZ-VE型、97PS)で、トランスミッションは5速MTと4速AT、後輪駆動に加え、2010年7月にはフルタイム4WDが追加されました。
2020年のマイナーチェンジとライトエースの終了
2020年9月のマイナーチェンジでは、小型商用車用に新開発された1.5L(2NR-VE型)エンジンと、衝突回避支援システム「スマートアシスト」が採用されました。燃費は従来型から約20%向上しバンの2WD・5速MTではWLTCモード12.6km/Lになりました。この時期、トヨタは販売チャネルを統合していたことから、ライトエースは2020年6月にタウンエースへ一本化されました。1970年から続いたライトエースの名は、ここで50年の歴史を終えています。
同じ2020年には、マツダ・ボンゴの系譜で触れたようにグランマックスのOEM車がボンゴ後継車として販売開始され、開発と生産を担当したダイハツも同車を「グランマックス カーゴ」として日本国内で販売し始めました。
認証不正と型式指定の取り消し
2023年12月、ダイハツの認証申請における不正が明らかになり、全車種の出荷が一時停止されました。2024年1月16日、国土交通省は、前面衝突試験でエアバッグを衝突センサーではなくタイマーで作動させていたとして、グランマックス、タウンエース、マツダ・ボンゴのトラックについて型式指定の取り消し手続きを始めました。一方、タウンエースのバンは同年1月19日に出荷停止の指示が解除されています。
その後、バンは2025年6月に法規対応と価格改定を中心とした一部改良を受けて生産が再開されましたが、トラックは2026年10月現在も、トヨタ公式サイトで「お取り扱いがございません」と表示されたままです。
グランマックス カーゴの生産終了
ダイハツは2026年3月に公式サイトで、グランマックス カーゴの現行モデルの生産を7月中旬で終了すると告知しました。同型のタウンエース バンも、公式サイトに価格の掲載は残っているものの、新規の注文はできない状況のようです。一方、インドネシアではグランマックスの販売が続いており、現地報道によると2026年6月の販売台数は6,694台で、アストラ ダイハツ モーターの小売販売の約53%を占めています。
コラム:「エース」の名を持つ車たち
トヨタのワンボックス車には、「エース」の名を持つ車が並んでいます。古くは初代パブリカのコンポーネントを流用した「ミニエース」から始まり、国内ワンボックス商用バンで圧倒的なシェアを誇るハイエース、短期間の販売に留まったグランエースまで多岐に渡ります。
タウンエースの兄弟車の名称は、ライトエースは「Light(軽い、軽快な)」、タウンエースは「Town(町、都会)」、マスターエースは「Master(先頭に立つ者)」に、いずれも「Ace(第一人者、最も優れた)」を組み合わせた造語です。マスターエース サーフの「サーフ」はさざ波を意味し、使い方の広がりを表しているとされています。
このうち、マスターエース サーフは1992年に、ライトエースは2020年に姿を消し、タウンエースも現行モデルが一つの区切りを迎えています。
第7章:次期型への期待
CSSファクトリーではこれまで、「次期ハイエースはハイブリッド?」と、その「続報」で、次期タウンエースは次期ハイエースを50cm程度短縮した派生車になるのではないか、という仮説をお伝えしてきました。次期ハイエースは横置きFFベースのハイブリッド・PHEVへ転換し、日本市場向けは4ナンバー枠を守る専用仕様になるという仮説からの推測です。
この仮説どおりになれば、次期タウンエースは、商用のタウンエースとして初めての前輪駆動車になります。乗用ワゴンの系統が2001年のノアでFFへ移ってから約25年遅れて、商用の系統も同じ道をたどることになります。
系譜の視点から注目したいのは、荷室長とトラックです。キャブオーバー型は前席の下にエンジンを置くことで、限られた全長のなかで荷室長を稼いできました。現行のグランマックス カーゴの最大荷室長は2,045mmとされています。4ナンバー枠のFF車で、ショートノーズ化によってこの荷室長をどこまで維持できるかが、商用車としての評価を左右すると担当者は考えています。また、タウンエースには初代の1978年からトラックが設定されてきましたが、次期型がFFバンを基本とする場合、トラックが用意される可能性は低いと思われます。担当者の期待としては、ハイラックス・チャンプをベースにボディを4ナンバー枠内に縮小した安価なピックアップが後継車として国内に導入されると面白いと思いますが、勝手な妄想に過ぎません。
キャンピングカーのベース車としては、ハイブリッド化によってAC100V・1,500Wの給電機能が設定されることに期待しています。給電機能を活用した走行中のポタ電充電が可能になると、キャンピングカーの電源構築が大きく変わるのではないかと考えています。
第8章:系譜から見えてくるもの
1970年のライトエースの上級車として1976年に生まれたタウンエースは、豪華なワゴンとマスターエース サーフの時代を経て、1992年にライトエースと兄弟車になりました。乗用ワゴンはFRのタウンエース ノアを経てFFのノア/ヴォクシーへと独立し、商用バンはダイハツが開発・生産するグランマックス系へ移って、座席下エンジンの後輪駆動という形を守ってきました。そして、初代のキャンパー仕様「キャニオン」から、現行のバンやトラックをベースにした小型キャンピングカーまで、タウンエースは世代を超えてキャンピングカーと関わり続けています。
CSSファクトリーは、タウンエースをはじめとする小型バン・トラックベースのキャンピングカーの車検・整備・修理にも対応しています。年式毎の特徴を熟知している私たちが、架装後の重量や使用状況を踏まえた点検と修理をご提案します。
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