こんにちは、CSSファクトリーです。
前回の記事「次期ハイエースはハイブリッド?」(2026年5月29日公開)では、2025年11月のジャパンモビリティショーに参考出品された「ハイエース・コンセプト」と、会場でトヨタの技術説明員の方から伺ったニュアンスをもとに、次期ハイエースが横置きFFベースのハイブリッド・PHEVへと転換する可能性、日本市場向けは4ナンバー枠を堅持する専用仕様であること、AWD仕様の設定、そして次期タウンエースが次期ハイエースを50cmほど短縮した派生車になるのではないかという仮説をお伝えしました。今回は、記事公開以降の動きを元に、続報としてお伝えします。
前回の記事は「担当者の妄想」と断りを入れつつも、実際にジャパンモビリティショーの会場で技術説明員の方と交わした会話に基づく、一定の裏づけを持つ推測でした。その後公開された一次情報を積み重ねる形で、前回の仮説がどこまで補強されたのか、あるいはどこが依然として不確かなのかを改めて整理してみます。
■ グランマックス(タウンエース)の生産終了
ダイハツの公式サイトでは、2026年7月中旬をもってグランマックス カーゴの現行仕様の生産を終了したことが明記されています。タウンエースは、グランマックスをベースとしたダイハツからのOEM車両で、前回の記事で触れたとおり伝統的にダイハツが生産してトヨタに供給してきた車種です。その供給元であるグランマックスの現行仕様が生産終了を迎え、タウンエースも既に新規発注は出来ないようですので、現行世代には一つの区切りがついたといえます。
ただし、この生産終了が次期タウンエースや次期ハイエースの発売時期そのものを直接示すものではありません。業界誌の報道でも、現行タウンエースバンについて「2026年夏に新規受注停止」「2027年春にフルモデルチェンジ」という情報が伝えられています。これらはメーカーの公式発表ではなく、伝聞レベルの情報であることには注意が必要ですが、前回の記事で「来年登場と噂される次期ハイエース」と書いたスケジュール感は、この噂とも矛盾しない内容といえるでしょう。
■ カヨイバコという電動商用車ファミリーの全貌
前回の記事で取り上げた「ハイエース・コンセプト」は、単独の参考出品車ではなく、「カヨイバコ」と呼ばれる電動商用バンのコンセプトシリーズの一員として展示されたものです。カヨイバコ自体は2023年のジャパンモビリティショーで初めて提案された構想で、2025年の出展ではサイズ・用途違いの車両ファミリーへと発展しました。
標準型のカヨイバコは全長3990mm・全幅1790mm・全高1855mmという、タウンエース級のコンパクトな寸法でバッテリーEVとして展示されていました。市販版では、全幅を1700mm以下に抑えて4ナンバー枠内になると思われます。そして、前回の記事で扱った「ハイエース・コンセプト」は、ノーマルルーフ仕様(商用ユース想定)とハイルーフ仕様(移動医療設備への対応を想定)の2タイプが公開されました。さらに、ダイハツ側からはリアモーター駆動の軽バン仕様「カヨイバコK」も出品されており、トヨタとダイハツがグループ内で商用バンの「大・中・小」のラインアップを構築しようとしている構図が見えてきます。
前回の記事では、次期ハイエースの4ナンバー枠パッケージングに「軽自動車のスーパーハイトワゴンが用いるノウハウ」が投入されるのではないかと推測し、ダイハツの知見の活用に触れました。カヨイバコ標準型はBEVとして展示されていましたが、4ナンバー枠のプラットフォームを複数用意すること、市販版がBEVのみであることは考えにくく、ハイブリッド・PHEVも設定され、4ナンバーハイエースの短縮版として用途に応じて異なる動力源が選択できるのではないかと考えます。
■ CJPTという開発の後ろ盾
トヨタとダイハツによる商用バン共同企画の背景には、「CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)」というアライアンスの存在があります。CJPTはトヨタ・いすゞ・日野・スズキ・ダイハツの5社が出資して2021年に発足した組織で、商用分野におけるCASE(電動化・自動運転・コネクテッド・シェアリング)の実装と、物流現場が抱える課題の解決を目的としています。
軽商用車を得意とするスズキ・ダイハツと、大型・中型商用車を手がけるいすゞ・日野、そして乗用・商用の両方を持つトヨタが同じ枠組みの中で協業することで、軽自動車の超低床設計ノウハウが4ナンバー枠の商用バンにも波及する土壌が整っていると考えられます。前回の記事で述べた「ダイハツの知見を活用した緻密なパッケージング技術」という見立ては、このCJPTという母体を踏まえると、単なる憶測ではなく一定の裏づけを持つ仮説として補強できそうです。
なお、e-ハイゼットカーゴ/アトレー、e-エブリイ、ピクシスバンBEVは、CJPTが関わる成果のひとつです。登場時のニュースリリースにはCJPTのかかわりは明記されていませんが、2023年5月の公開時のリリースには明記されています。その次期モデルが「カヨイバコK」になると推測されます。
■ レジアスバンの教訓とタウンエースへの波及
前回の記事では、トヨタが約30年前にレジアスバンで「キャブオーバーではないFRの4ナンバー商用車」を提案しながら、荷室長の不足という弱点から市場に受け入れられなかった経緯に触れました。次期ハイエースが同じ轍を踏まないためには、4ナンバー枠という制約の中で荷室長をどこまで確保できるかが最大の課題になります。
この観点から見ると、長年軽自動車でダイハツが積み上げてきた超ショートノーズのFFパッケージングの実績は、単なる技術的な参考例にとどまらず、次期ハイエースおよびその派生車と目される次期タウンエースの成否を左右する重要な技術的資産だと考えられます。前回の記事で示した「次期ハイエースを50cm程度短縮したものが次期タウンエースになる」という仮説が正しければ、ダイハツの知見が最大限に活用されると思われます。しかしながら、これらはあくまで前回記事からの延長線上にある仮説であり、両車のプラットフォーム共用を明言した公式情報は今のところ存在しない点は改めて申し添えておきます。
■ 価格帯の可能性
前回の記事では、次期ハイエースのハイブリッド仕様について「価格は現行ディーゼル車と同等水準を目指している」というニュアンスにも触れました。現行ハイエースのガソリンとディーゼルの価格差が約60万円であること、トヨタ・ノアの同一グレードのガソリン車とハイブリッド車の価格差が35万円程度であったことから、現実的な見立てではないかと思われます。
しかし、元々1.5リッターのガソリンエンジン搭載車の設定しかなかったタウンエースの場合、ハイブリッド仕様のみでは大幅な価格上昇は避けられません。次期タウンエースには車両価格を抑えたガソリンエンジン仕様が設定されるのかどうか、注目していきたいところです。
■ 後輪アシストという現実的な落としどころ
駆動方式について、前回の記事では「前後ツインモーターのAWD仕様が全車標準になることもあるかもしれない」という可能性に触れました。この点を裏づける公式情報は依然として確認できていませんが、フィアット・デュカトのようなFFで重心の高いキャンピングカーが抱える登坂時のトラクション不足という課題は、業界内でも共通して認識されている論点となっています。
筆者自身の妄想ですが、登坂時のトラクション不足を補う方法として、後輪側を低出力のアシストモーターとする簡易的な4WD構成を提示しておきたいと思います。現行ハイエースのフルタイム4WDのように、重量が嵩む本格的な機構ではなく、雪道や未舗装路での発進・脱出を助ける補助的な駆動という位置づけです。低床フラットフロアを維持したまま、商用4WDに求められる最低限の要件「発進時・脱出時のトラクション確保」だけを低コストで満たす、現実的な割り切り方だと考えます。前後同出力のツインモーター方式に比べてコストと重量、必要なスペースの面で有利であり、CJPTが掲げる「商用車の電動化と物流現場のコスト負担軽減の両立」という方向性とも整合する構成です。
具体的な性能としては、60km/h程度までアシストできれば十分だと筆者は考えています。単発の発進時アシストに加えて、降雨でぬかるんだ、あるいは積雪した坂道を延々と登り続けるような場面にも対応できる仕様が必要ですが、このような4WDであれば、低コスト省スペースで実現できるのではないでしょうか。トヨタは1997年の初代プリウス以来、世界中で蓄積してきた電動駆動の知見を持っています。四半世紀以上にわたるハイブリッドシステムの実績により、途上国を含む世界の商用車市場が求める高い信頼性と耐久性を低コストで実現できるのではないかと思われます。
インホイールモーターの妄想
一方で、より野心的な構想として、トレーリングアーム式のリアサスペンションとインホイールモーターを組み合わせる案も考えられます。荷室フロアをさらに低く、フラットにできるという利点があり、パッケージングの理想形としては魅力的です。しかし、商用車が日常的に晒される泥水や飛び石への耐久性、ばね下重量の増加、そしてコストという3つの壁は依然として高く、実用化される期待は低いでしょう。しかしながら、デュカトやいすゞ・エルフの系譜でも触れたFFのかつての「エルフマイパック」のような超低床FFプラットフォームはキャンピングカーベース車として非常に魅力的ですし、低床を活かしたまま4WDが成立すればトラクション不足の懸念も払拭されます。
妄想でしかありませんが、下図左のエルフマイパックのトレーリングアーム式リアサス仕様のようなシャシーをベースにしたキャブコンなら、全高2100mmで室内高1800mmを確保することも実現できるかもしれません。

■ 電源供給、変わらぬ焦点
電源供給については、前回の記事で触れたAC100V・1500Wという電源は、トヨタのハイブリッド車の多くに標準またはオプションで装着可能な装備です。よって、次期ハイエースやタウンエースがハイブリッドやPHEVになるなら、搭載される可能性が高いと思われます。キャンピングカーへの架装を前提にすれば、AC100V・1500W電源がメーカー出荷時に装着されていることは、車中泊設備の設計を大きく左右する要素であり、私たちCSSファクトリーとしても継続して注視していきたいポイントです。
働く現場における給電の価値
この給電機能は、キャンピングカーとしての快適性だけでなく、工事現場や屋外作業といった「働く商用車」としての本来の用途においても、大きな価値を持ちます。電源の無い現場作業でAC100V電源が必要な場合、従来はガソリンエンジン式の可搬発電機を別途持ち込む必要がありましたが、ハイブリッド・PHEVシステムによる給電ができれば、可搬発電機そのものが不要になります。
また、熱効率、騒音、排気ガスのクリーンさという観点でも、車両搭載のハイブリッドシステムはガソリンエンジン式発電機を大きく上回る可能性があります。ハイブリッドシステムは高効率なエンジンとモーターを組み合わせて発電するため、小型の汎用エンジンを使った可搬発電機に比べて熱効率で有利になりやすく、騒音も抑えられます。排出ガスについても、厳しい排出ガス規制に適合した排ガス浄化装置を備えた車両搭載エンジンのほうが、簡易的な可搬発電機よりクリーンな可能性が高いでしょう。作業現場の近隣環境を想定すると、この差は決して小さくありません。こうした理由から、給電機能は商用車にこそぜひ採用してほしい、というのが筆者の率直な願いです。
■ まとめ—確定情報と推測情報を分けて追う
今回の続報でお伝えしたかったのは、グランマックス生産終了が確定した一方で、次期ハイエース・タウンエースのプラットフォームや駆動方式の詳細については、依然として推測の域を出ていないという二点です。カヨイバコというファミリー全体の姿や、CJPTという事業企画の枠組みは明確ではありますが、確認できた事実は少なく次期モデルの仕様として断定できる材料は揃っていません。
私たちCSSファクトリーとしては、「確認できた事実」と「推測にとどまる情報」を混同しないよう線引きすることを大切にしています。メーカーの公式発表を待つ姿勢を基本としながらも、モーターショーでの直接取材のような一次情報に近い手がかりも積極的に集め、両者を明確に区別した上でお客様への情報提供に役立てていきたいと考えています。
現行ハイエースやタウンエースをベースにしたキャンピングカーはこれからも長く愛用されることが見込まれる一方、次期モデルの仕様が明らかになった段階で、駆動方式や給電性能といった情報を優先的に取り込み、適切な整備や修理を提供できる準備を進めていく方針です。次期モデルの正式発表時期は依然として公表されていませんが、新たな一次情報が公開され次第、本シリーズの続報として改めてお伝えします。